書物(美術)

□イヴ「私はメアリーが大好きなの」
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スリスリ。

「ね、ねぇイヴ?」

スリスリ。

「うん?」

スリスリ。

「近くない?イヴ」
スリスリ。

「普通だよ」

「腕に抱きつかれてスリスリされているこの状況を普通という人は余りいないと思うわ!!」

「恥ずかしがり屋さんなメアリーたんも可愛いよ!!」

「そんないい笑顔でサムズアップされても困るわよ!!」

「メアリーたんの薔薇(純潔とも読む)を散らすのは私なのよメアリー」

「何故急にイケメンになってそんな事言うの!?本気なの!?ねぇ本気なの!?」

―――――――
――――

こちらの世界に来てから、イヴと私には若干距離があった。
何ともいえない微妙な心の壁。それを突き抜けようと様々な策を講じた。

そして、1ヶ月前に使った「策」が…………まあ、その、女の子同士の友情が少しばかり行き過ぎた感じの本をイヴの部屋に置いて放置するというものだった。

効果は劇的だった。

数日後からイヴは積極的に話しかけてくれるようになった。嬉しかった。本当に嬉しかった。
嬉しすぎて、イヴが私を見る視線の中に、「友情」以外にも「欲情」が混ざっている事に気付かなかった。


気づいた時にはもう遅かった。
イヴが目覚めていた。新しい世界に。


――数週間前

『メアリー!』

イヴは助走をつけて私に飛びついてきた。友達付き合いなど皆無であった私は、"年相応の反応"ぐらいにしか考えてなかった。まあ、まだこの時は普通にスキンシップだった。

『きゃっ!……もう、びっくりしちゃったじゃない!』

『にへへ』

以前なら見せなかったあどけない表情。
わざわざ策を講じた甲斐があったものだ。

『メアリー』

いつもよりわずかに熱を持った声に気づく。

『何――――ん』

? ??
あれ?この唇に伝わる柔らかい感触は何?
何でイヴの顔がこんなに近い……の……

『ぷはぁっ』

『……ィ』

『イイイイイイ、イヴ!?ななななな何を』

顔が真っ赤に染まっていく。混乱で頭がクラクラしている。

『メアリー』

『な、何?』

『……うふ』

ぞくうっ!と背筋を何かが駆けていく。
ジリジリとイヴが近づいてくる。いかにも『間合いを詰めてます』という感じが凄い怖かった。

そして気づく。
イヴの瞳が、獲物を狙う獣の瞳になっていることに。

逃げ出そうとしたが、瞬間、肩を掴まれる。

『楽しい事……しよ?』

ハアハア息を荒げながら放つセリフは変態的にしか聞こえませんありがとうごさいました。

この日、何とか純潔は死守し、自重するよう厳しく言ったものの、普通以上の距離感を保ったまま、今に至る。

―――――
―――

「メアリィ」

甘えるように抱きついてくるイヴはどうしようもなく可愛かった。この現状がそう悪くないと思い始めてる自分がいる事に驚く。

……ちょっとご褒美を与えてもいいかもしれない。

「イヴ」

「ん?ぅ、――――」

イヴが顔を上げたところで唇を唇で塞いだ。

「んぁ……ふ、んむ……んぅう」

「ん…………ぷは」

「っ…………はっ、はっ」

上気した顔で見上げてくるイヴ。焦点の定まっていない目に、うっすら涙が見える。

私はニヤリと笑った。

「たまには私から、ね」



...To be continued
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