ノーマルブックス

□過去拍手文
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師走駆


寮への道を一人で歩く
今日は仕事もないしバイトもない珍しく暇な日だ
みんなからはいつまでバイトしてるんだとかアイドルがバイトってとか色々言われてるけど
忙しいのは嫌いじゃないしバイトは結構楽しい


プルルルル…


あれ、電話?
誰からだろう
…まさかまた父さんからじゃないだろうな
恐る恐る見てみるとそこには幼馴染の名前が書いてあった
家出する前はとても交流があった幼馴染
家出してからもちょくちょく連絡はしてるし、仲は良い方だと思う
実はこんなに俺になついてくれてる彼女のことが好きなのだがきっと彼女はなんとも思ってないだろう
舞い上がりながらもちょっと寂しい気持ちを込めて通話ボタンを押した


『駆!
私と駆が結婚することになっちゃった!』


…だから、開口一番でそんなこと言われるなんてまったく思ってなかったさ


「え、えぇ!?
な、何でそんな話に!?」

『駆のお父さんが駆を家に戻すにはそれしかない!って言い出して…』


あの親父何考えてんだよ!
今までのもぶっ飛んでたけど今回のは一番たちが悪いぞ!


『あ、駆のお父さん』

『ちょっと貸してくれるかい?
もしもし、駆?』

「ちょ、父さん何考えてんだよ!
よりにもよって…」

『いやーこれは駆のためにだなぁ』

「何が俺のためにだよ!」

『大好きな人と結婚となれば駆も帰ってくるだろう!』

「な、何言ってんだよ」

『とぼけるなよ駆〜
俺は知ってるぞ、小さい頃からお前はこの子のこと…』

「あー!!
ちょ、頼むから言わないでくれ!」

『安心しなさい、俺が手を回せばちょちょいのちょいでだな』

「勝手なことすんなよ!
ていうかそんなことで職権乱用すんな!」

『何でだよー
俺はお前が幸せになるためにだなぁ』


あぁもう!
このバカ親父は何を言っても改めないのか!
ていうかこれ以上俺の心の内を明かさないでくれ!


「それは俺が自分でやる!
告白もプロポーズも自分でやるから!
だから父さんは首を突っ込まないでくれ!」


言った!
言ってやったぞ!
案の定父さんは珍しく俺に負けてわかった…と言ってあとは黙った


『も、もしもし?』

「あ、あぁ
ごめん、色々と巻き込んで」

『う、ううん、いいの!
それより…』

「ん?
どうかした?」

『…あんなに大声だったら電話に耳当ててなくても聞こえちゃうよ』

「は!?」

『そ、それじゃあ、また電話するね!
じゃあ!』


そう言って電話は切れた
俺は放心状態
聞こえちゃう?ってことは…


「〜っ」


恥ずかしさに思わずしゃがみこんでしまった
今までの想いがすべて彼女に晒されてしまったということだ
失敗した、こんなつもりじゃなかったのに
…けど、嫌そうじゃなかった、よね?
そう考えてもしかしてなんて希望が浮かんできた
立ち上がってまた寮へと足を進める
父のようなぶっ飛んだサプライズなんてできないけれど、俺はこの想いをいっぱいいっぱい彼女にぶつけよう
それは何年後になるかわからないしその時どうなってるかわからないけど
とりあえずはそれまでに想いを膨らませよう


貴方の未来に告白の約束を


(か、駆!
大丈夫だったか!)
(は?
恋どうかしたの?)
(いや、さっき帰ってる途中に道端でいきなり駆がしゃがみこんだのが見えたから何かあったのかと思って)
(…見てたの?)
(え、駆さん?
何で怒って)
(今すぐ記憶から抹消しろ!)
(ちょ、かけ、ぎゃあああ!)

(駆荒れてるな)
(メールが来てるのは気づいてなさそうだね)

【近い未来に期待します
できれば直接聞きたいな】
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