殺し屋の空色
□1:蒼
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俺は今、デカい病院の屋上にいる。
下には忙しく走る車が何十台も何百台も見える…はずだが、自殺防止のために立ててあるフェンスが邪魔で見えない。
響くのは車の走るサァーという音だけ。急ぎすぎていてクラクションを鳴らす暇さえなさそうだ。
病院は清潔なイメージあるとか言ってる奴が居るが、そんなことはない。屋上は外と空気で繋がってるから排気ガスの匂いで吐き気がする。
俺が吸わなかったものは上でオゾン層を破壊してると思うと、吸わなきゃいけない気分になる。
だって暑くなるの、嫌だし。
だけど俺一人が肺に炎症起こすぐらい吸い続けたって意味ないからやらねーけど。
不意に後ろからガチャンと鉄製のドアの開く音がして振り返ると、俺担当の看護師がいた。だいぶ息があがっている。
「またこんなとこにいたのねっ…少しは気を使いなさいよまったく」
太り気味の彼女にガミガミ言われ、俺はボタンを押し彼女のところに行く。
ボタンを押して忘れていたことに気づく。俺は今車椅子に乗っていて、足が使えない状況だということを…
「お兄ちゃんまた抜け出したんだってー?駄目でしょ言うこと聞かないと」
「ここに居てもつまらないからなぁ…」
「"も"って、じゃあどっちにしろつまらないんでしょうが」
しょうがないんだからー、とぼやく妹に自然と笑みがこぼれる。
あのあと昼食を食べてベッドの上で暇していた俺に会いに来てくれたのは無二の妹だ。中2。
幸い個室だし、妹の甲高い声の犠牲者は俺一人らしい。
妹は俺が交通事故(ひき逃げで犯人は捕まっていない)に遭ってから毎日片道2時間使って会いに来てくれる。
どうやら両親は妹の育て方を間違えずに中2まで頑張ってきたらしい。
「骨折って大変だよねー、あとの4ヶ月お兄ちゃん耐えられるかなー」
ああ4ヶ月か、ここでは1日が百年くらいに感じる。
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