殺し屋の空色
□0:紫
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「紫(ユカリ)ー…あんたまたあの子イジめてんのー?」
ああうるさい、あたしが誰イジめたっていいじゃない。
そう言うと友達はよくあたしから視線を外す。何よ、言いたいことあんならはっきり言えよ。そっちのほうが嫌いだよ。
「もしコレが先生に見つかったらなんて言い訳すんのよ!!」
怒り狂ってる。コイツももう少し声の大きさ考えろよ。先生に見つかったらどうすんのよって言えるやつじゃないね。
「うるさいなぁ…元々言い訳なんて無いんだから、考えなくていいんだよ」
無い言い訳を考えてるぐらいならイジめなんてしなきゃいいっつぅの。
あーあ、昔はあたしに加勢してあの子イジめてた癖によく言うよ。
もしかしてあたしのがバレて自分たちのやったことが発掘されんの心配なのかなぁ…バカじゃないの。
そんなこと考えてるぐらいなら、後悔するぐらいなら、やめときゃよかったじゃん。
「帰るわ」
友達1人しか居ない教室を後にして、あたしは青いバッグを右手に持ってドアを閉めた。
誰も知らないけど、あたしが人をイジめる理由はただ一つ。楽しいからだ。
だってあの憎んでるって視線、たまんないもん。
長ーい廊下の後は長ーい階段。早く上級生になって階段の数減らしたいな、とか思ってたけど不意に視線を下から上へやる。
目の前には、誰も居なかった。
だけどちょっと上の窓の外には、居た。
育ちの良さそうな、薄い色素の髪
育ちの悪そうな、いやらしい眼つき
あたしはいつのまにか誰だか分からない女に睨まれてた
「誰よアンタ」
怖いもの知らず、ってよく友達に言われたりする。きっとこの場面はそういう場面なのだろう。
話掛けたにも関わらず、ソイツは口の両端を上げるだけだ。
意識はしない、だけど瞬きをした。
瞬間、ソイツのせいで隠れていた夕日が目に刺さり、階段なのによろけてしまった。左手が手すりに触れててよかったって初めて思った。
状況からしてソイツは3階の窓から消えたのだ。
もちろん窓の外に手すりとか、ベランダなんてもんはない。
先生よりもタチが悪いやつに見つかった、なんて後で思うことだった。
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