□二年越しの約束
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※嫁卒業ネタ
※にょた嫁
※暖かい季節になりました
※綾の本心はご想像にお任せします
※旦那ぁああああ!
※ほのぼの
※糖分高めにつきご注意を















はらり、はらり。
桜並木の道、薄桃の花びらが暖かな風に乗って吹雪となっていく。
「もう行くの? 滝」
長年同室で過ごした仲であり、親友とも言える喜八郎が名残惜しそうに呟いた。
涙を流してはいなかったが、その顔は今にも悲しみで歪みそうなのを耐えているように見えた。
「此処まですまないな、この先は一人で行く」
「ねぇ、本当に行くの?」
「何を言っているんだ、さてはこの私と別れるのが辛いのか?」
「なんであの人のところに行くのさ。凄く我侭だし、無神経だし、体力馬鹿だし、自己中心的だし、おまけに暴君って渾名だし。滝が勿体ない」
喜八郎は滝の服の裾を掴み、じっと滝を見た。
「喜八郎…?」
「滝」
喜八郎はゆっくりと滝の顔をまじまじを見つめ、次第に顔を近づけていった。
「綺麗だ、滝。とっても綺麗。あの人には本当に勿体ないよ」
そう言って喜八郎は優しくぎゅっと滝を抱き締めた。
その時、強い風が吹いた。
また一段と桜が舞い散る。
ふと、その桜吹雪の隙間から向こうを見ると喜八郎は一人の人影を見た。
笠を被り、松葉の柄の入った緑の着物を着た侍風情の男。
一目で喜八郎は誰かを悟った。
「あーあ、どうやらお迎えが来ちゃったみたいだね。滝」
「え?」
滝はその言葉に目を見開いた。
「滝、元気でね」
喜八郎はバッと滝から離れたかと思ったらまた突然強い風が吹いた。
滝は無意識に身を守ろうと腕で顔を覆ってしまった。
「き、喜八郎!」
風が止み、腕を下ろした時にはもうそこには長年連れ添った級友の姿は何処にもなかった。
はらり、はらり。
さっきの風の激しさなどなかったかのように桜の花びらが雪のように景色を彩る。
ざっ、ざっ…
砂を踏む、足音が聞こえた。
滝は振り返る。
自分の長い髪が軽やかに翻(ひるがえ)ったその先には、
「滝」
穏やかに囁く声がした。
瞬時に誰かであるか、滝はすぐにわかった。
その声に滝は口を震わせながらも
「七松、先輩……」
と呼ぶと男は被っていた笠を取り外した。
笠の下には大人びた見慣れた顔があった。
そして、一歩ずつ二人は距離を縮めた。
ゆっくりとお互いを確かめるように。
「滝、会いたかった…」
小平太は漸く滝を抱き締めた。
その言葉はしみじみとした重たさがあった。
それもそうである。
二人は今日二年ぶりの再会を果たしたのだから。
「すいません、お待たせしました」
滝も小平太の胸に顔を埋める。
あぁ、この感じだ。
覚えのある懐かしさに滝は改めて自分達は再開したのだと確信できた。
「長かったな」
小平太は言った。
「そうですね、もう貴方が学園を去ってから二度、いえ今年を含めると三度の春を迎えました」
「来てくれるだろうか、不安だった。滝が心変わりしてないだろうか、約束を忘れていないだろうかって」
「そんな。私も、貴方が来ないのではと不安でした。自分の知らない内に戦に散ったのではないか、違う女(ひと)が出来たのではないか、と」
二人は顔を見合わせた。
すると、小平太は滝の両手を掴み、包むように握った。
「やっと、だな。滝」
小平太がそう言うと滝は
「はい」
と穏やかな笑みを浮かべた。
この日をどれだけ待ち焦がれたか。
今思えば本当に長かった。
だけどもう大丈夫、これからは…









「これからはずっと一緒だ」







二年越しの約束。
それはもう離れることなく、夫婦として一緒になろうという約束。








++++++++++
ザ・自分向けの夫婦の未来図。
最後絶対こうなると信じている←
お砂糖如何でしたか?
綾部は最後に滝の見送りがしたいと言って、滝と桜並木のとこまで一緒に来るという設定です。
事情もちゃんと知っています。
でも隠れて私はー、みたいな感じです。
小平太はもう一途に某忠犬の如く待ってました。
良かったね!
こへ滝万歳!
そんで此処まで読んで下さった皆さん、次作までさようなら!
 

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