帰る場所 後
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※「帰る場所」の続き
※雰囲気が三木→滝
※旦那が無力














「滝はアンタのことなんて覚えていない。僕の事も昔の事も皆…。滝には記憶が無いんだ…」







三木ェ門はそう言って振り返り、背後に隠れている滝を見た。
滝は一瞬にして身を強張らせる。
その瞬間、小平太は今の滝はかつて自分と張り合った三木ェ門に対してもこの有り様であることに気付いた。
そんな…、記憶喪失はそこまで酷いのか。
ますます胸が締め付けられそうになった。
「先輩、悪いことは言いません。…滝をこのままそっとしておいてくれませんか」
小平太に背中を向けたまま三木ェ門が言った。
その背中が何故か憎らしかった。
まるで自分の代わりに三木ェ門が彼女を守っているようで。
今、彼女と対しているのが自分ではないのが気に食わなくて。
「田村、でも私は」
些細な抵抗。
しかし、それはあっけなく砕け散る。
「いい加減しろ!」
ついに三木ェ門が荒い声を上げた。
これには流石に近くにいた滝も肩をビクつかせ、小平太も目を見開き驚いてしまった。
三木ェ門は小平太の胸倉を掴むと、滝に聞かれないよう小さく言った。
「何を偉そうに! 先輩が滝を戻してくれるんですか!? 僕なんか卒業してからもずっと滝を見守っていても何も出来なかったのに。先輩ならあっという間に出来るというんですか!? そんな上手い話があるとお思いですか!」
卒業してからも、ずっと…?
小平太の中で嫌でもその言葉が頭にこびりついた。
私のいない間に滝はずっと田村と一緒にいたのか…?
不安と恐怖がどっと押し寄せてくる。
何故、田村が?
素朴な疑問だが、それが最終的に最悪の方向しか思いつかない。
田村は滝のことを…
「お前、好きなのか? 滝が」
止めてくれ。
否定してくれ、聞きたいが聞きたくも無い。
お願いだから、違うと言って欲しい。
「えぇ、勿論です。貴方が滝を取る前からずっと」
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