昼下がり
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※体育委員会は常に予算追加を望んでいます
※体育委員長が物を壊さない日なんていつになるやら
※何処の委員会も二番手は苦労人
※お母さんな嫁
※ほのぼの、のほほん















「小平太、いつまでそこにいるんだ」
会計委員長である文次郎が使用している部屋の前で居座っている体育委員会にそう言った。
「文次郎が予算を体育委員会にくれるまでだ!」
「体育委員会にやるほどの予算はない!」
「いいじゃんかぁー、少しぐらい」
「無理だ」
委員長同士の言い争いは後輩を置いていくように進んでいき、ついには二人で乱闘が始まった。
同じく会計委員会の三木ェ門を始めとする下級生は止めに入るべきか、それとも見守るべきかと迷い、滝夜叉丸達と顔を見合わせた。
「どうする? 滝夜叉丸」
三木ェ門が言った。
「別に私達が争っても、止めに入っても委員長があれじゃあ怪我人が増えるだけだ」
「確かにそうだな、…じゃあ、潮江先輩がこれで鍛錬なしにしてくれるように祈るとするか」
「では、こっちはいつものランニングがなくなるのを祈らせてもらう」
「お互い苦労するな」
「本当にな」
委員会の二番手を担う者同士のぼやきは委員長の乱闘をぼんやり見ながらつらつら続く。
「てか、予算は七松先輩が学校の物を壊さなければいいんじゃ…」
そこへ滝夜叉丸の左隣に座っていた三之助がぼそりと言った。
「言うな、三之助」
小平太に聞かれては不味いと慌てて滝夜叉丸は三之助の口を塞いだ。
もうどうしようもなく、わかりきったことだが、そう思うように上手くいかないのが現実。
「あの、滝夜叉丸先輩。僕達いつまでこうしていれば?」
「なんか無駄のような気がします」
自分達の行動に意味がないと言うかのように滝夜叉丸の右隣に座っていた四郎兵衛と金吾が言った。
滝夜叉丸は深い溜め息を吐いて、四郎兵衛、金吾、と小声で呼んで手を招く。
二人は滝夜叉丸に近づくと、小平太に聞こえないよう小さな声で
「お前達はただこうやって居座っているのといつものような過酷な活動とどっちがいい?」
と言った。
「「えっ…」」
それを聞いてサァと血の気が引くように二人は一瞬にして、顔を青ざめた。
毎日を思えば、今はどれだけ楽か。
金吾は
「い、今がいいです」
と言った。
「もう少しいましょうか」
四郎兵衛も同じである。
「わかればいい」
そう言って、滝夜叉丸は懐から小さな包みを取り出した。
「この前、町に行って買ってきた羊羹(ヨウカン)だ。食べるか?」
「え、いいんですか!?」
「この私がわざわざ用意したんだ。遠慮することは無い」
包みを開けば、一口サイズぐらいの小さい羊羹がいくつも入っていた。
「じゃあ、いただきまーす」
「ありがとうございます!」
小さな手が羊羹を鷲づかみして、取っていく。
「三之助はいるか?」
「いや、俺はいいっす」
「何なんだ、人がわざわざ折角用意したものを」
「甘いものがあんまり好きでないんです、後滝夜叉丸から貰うものだから」
「先輩と呼べ」
軽く頭に平手が呼んだ。
「全く、なら少し持って帰れ。そして、同室の者にでもあげろ。こんだけあると流石に私だけでは食べきれないからな」
滝夜叉丸はそう言ってぽとぽとと三之助の手の上に小さい羊羹を置いた。
「そうっすか」
三之助はあまりいい顔をせず、受け取っていく。
反対でははぐはぐ、と美味しそうに羊羹を頬張る四郎兵衛と金吾。
「こら、金吾。顔に羊羹がついているぞ」
たまにあるゆったりとした時間。
こんな時間がいつまでも続けばいいな、と思いつつ…、委員長同士の乱闘が引き分けに終着したのはそれから大分後になった頃だった。
「ま、…全く、しつこいな。小平太」
「へへへ、体力なら誰にも負けないからな」
「この馬鹿が」
「あ」
小平太が何かに気付いた。
何だ、と文次郎がその視線の先を見るとそこには会計、体育委員会の後輩達がやることがなくついにはその場で居眠りをしている姿があった。
「気が抜けて居眠りとは鍛錬が足りん」
「そうかぁ? 私は可愛いなぁ、と思った」
小平太がにこにこと滝夜叉丸達のところへ歩いていく。
彼は両隣りにいる後輩達に寄りかかれながら皆ですやすやと眠っていた。
「何しているんだ、小平太」
文次郎がじーっと滝夜叉丸達を見ている小平太に声を掛けると
「私も混ざる!」
「お、おい! 小平太!」
こんな安らかな昼下がり。
たまにはいいんじゃないだろうか。






++++++++++
この後、小平太の乱入で皆目覚めるけどまた皆でお休みです。
だけど、会計は鍛錬です(笑)
こんな体育委員会もいいと思うんだ!
 

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