どんな時でも
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※もしも、夫婦が結婚したならという妄想
※しっとり
※にょたな嫁
※室町で夫婦











「幸せだ」
小平太が後ろから滝夜叉丸を抱き締めながら呟いた。
その胸の中には洗濯物を畳む滝がいる。
薄紫の小袖姿のその腹部は少し膨らんでおり、身篭っているのが一目でわかった。
「いつまで続くのでしょうね」
とん、と滝は畳み切った洗濯物を軽く叩くとそう言った。
「またそれか、滝」
小平太は苦笑いしながら、眉を顰めた。
滝がこう悲観的に考えることは今に始まったことじゃない。
一緒に暮し始めてから、いやもっと前か。
最近、身篭ってからはさらに嫌な方向へ考えるようになった気がする。
幸せすぎて、失う怖さを怖れて…
こんなにも自分には死んでも悔いが無いと思えるほどの幸せ。
いつか他所から邪魔が入ったり、死に別れれば、簡単に崩壊する幸せ。
寄り添う時に覚悟はしていたのに、時たま滝が呟くその一言が、現実を突き出す。
やがて、風と落ち葉の転がるカラカラ、という音を聞こえてきた。
「また木の葉が舞っていますね」
冬の冷たさが部屋の隙間からひゅう、ひゅう、と入り込んでいる。
滝が優しく自分の腹を撫でた。
お腹の中の子を労わるように。
「また寒くなるな」
小平太は言った。
「そうですね」
「でも、滝ぃ。春になって欲しくないよー。仕事が増える」
「何を仰っているんですか」
冬は戦に向いている季節じゃない。
寒さや雪といった自然が脅威となって、逆に兵を疲労させて長期の戦が出来ない。
秋に取れたばかりの米も暖を取る為の火種もこの季節は年を越す為には貴重なものだ。
だから、今はどこもあまり動かない一番穏便な時。
「でも」
滝は穏やかな表情で
「貴方が生きてくだされば、それでいいです」
と、言った。
「花が舞う春でも、雨が舞う夏でも、葉が舞う秋でも、雪が舞う冬でも、貴方が生きてくだされば。どんな時でも待っていますから」
ああ、良く出来た嫁だな。
自分の妻でありながら感心してしまう。
嬉しくもあり、悲しくもあり。
「ありがとう、滝」
この幸せが末長く続けば、と切に小平太は思った。










++++++++++
さーせん。(´;ω;`)
今甘甘なネタが思い付かなくて、しっとりなお話が出来ちゃいました…
何故!?
てか、ごめんなさい!
甘甘ネタ誰か下さい!←
 

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