壱
□花王を称えよう
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いつもの鍛錬で睡魔が限界の時だった。
何とか寝巻きに着替え、倒れるように布団に潜って暫く経った頃だ。
やけに布団に重みを感じたのだ。
何だ、と思い、目を開けると
「あぁ、起きたのか」
と、平然とした顔で人の布団の上に乗っている仙蔵の姿があった。
「何しているんだ、お前」
「見ての通り、夜這いだが」
「あのなぁ、俺は」
「安心しろ、一人でする」
そう言って仙蔵は勝手に布団を捲ったと思えば、やがて自身へと手を伸ばした。
「おい!」
人の話を全く聞かないまま、仙蔵はそれを奉仕し始めた。
赤い舌と細い指が這い、
「ふ…んんっ…ん…」
色の声が気をそそる。
それはもう丁寧に、丁寧に。
思わず、笑みが零れた。
ヤりたいのなら言えばいいのに。
「仙蔵」
「何だ、ヤる気になったか」
「お前の所為だからな」
「とまぁ、そんな事があったな」
文次郎が満足したように話を終えると今まで話を聞かされていた留三郎はげんなりとした様子で項垂れていた。
「うぜー。とてつもなくうぜー」
「何言うんだ! お前は!」
「は、俺の伊作なんか」
と、留三郎はかく語る。