壱
□いくら求めても、君へまでは遠くて
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※三朗の片思い状態です
※雷蔵は三朗の気持ち知りません
いつも傍にあるものだと思っていた。
雷蔵が私に向けてくれる笑顔も優しさも、視線も一番は私のものだ、と勝手に自負していた。
それがある日、
「僕ね、八と付き合う事にしたんだ」
と、本人から思いにも寄らない事を告げられた瞬間に全てが打ち砕かれた。
嘘だ、と思った。
何故、何故。
雷蔵はいつも私といたじゃないか。
それなのに何で八と付き合うんだ。
そう考えながらもこういう時人は都合がいい。
本当に心から驚く時、人はとても冷静でいられるらしい。
私は本心を隠し、
「そうなのか、良かったな」
と、普段と変わらない雷蔵の顔で笑った。
「ありがとう、三朗」
その時の雷蔵の顔は本当に愛しい半面、私の内心を抉った。