リクエスト

思うように言葉が出れば
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※リクエスト
※成長ネタ
※六年なる前、つまり五年生
※甘い注意報
※那楽の中での金吾は将来自称が「僕」から「俺」に変わると信じてる。








金吾と喜三太は二人で町の川沿いを歩いていた。
金吾は見るからに侍だが、喜三太は被り笠を被り、小袖をを着て女性を装っていた。
まるで女を用心棒が護衛しているように。
何故、町にいるか。
密偵の試験である。
遊びでも何でもない本当の密書を懐に温め、さり気なく依頼人に届ける。
そんな試験。
試されているのは喜三太で、金吾は手助けと護衛として付いてきていた。
「金吾、金吾! あそこお団子屋さんだよ!」
「あまりはしゃぐな、喜沙」
「えー、折角の町なのに」
「遊びじゃないんだから、仕方ないだろ」
金吾がそういうと、喜三太はむうっと頬を膨らませた。
困った奴だ。
苦笑いしながら金吾は思った。
「じゃあ、その後は?」
と言った。
ああ言えば、こう言う。
半ば呆れつつも金吾は深い溜め息を吐いた。、
「…まぁ、後なら」
「やったぁ!」
町の賑わいに隠れながらの会話。
綺麗。
いや可愛い、か。
悦ぶ喜三太を見て、金吾がそう思っていたのを喜三太は知らない。
町の人々が次々と通り過ぎる中、喜三太と金吾は辺りを見る。
文を渡す相手がいないか、と。
やがて、喜三太が金吾の服を掴み、引っ張る。
何かと思えば、喜三太は首で左側を見るように示唆した。
金吾はその通り、左側を見た。
路地裏の薄暗い隙間、そこに黒い着物を着た人が待っていた。
密書を渡す相手だと声に出すことなく、理解した。
「言ってくる」
そう言って喜三太は金吾から離れ、路地裏へと向かった。
どんどん遠のく喜三太との距離に金吾は見失わないように目で追う。
何事もなければいいけど。
小さな不安が金吾の中で過ぎった。
やがて、喜三太が路地裏へと入った。
金吾はさり気なくその路地裏の出入り口付近に立ち止まる。
余計な人間が入らないようにする為である。
上手くいけばいいが。
暫くして、背後にどん、と背中を押す力を感じた。
振り返るとそこには
「終わったよー」
と、笑う喜三太がいた。
それを見て気付かれないように金吾はを撫で下ろした。
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