拍手ログ

ログ(妖怪パロ)
1ページ/3ページ

この国には神はいない。
誰もがそう云った。
しかし、この世に息づく森羅万象、巡る花鳥風月、心響く"魂の聲(コエ)"。
これらに惹かれ、憧れ、敬い、慕うそんな想いは何と例える?
一度は出逢うであろう摩訶不思議を何と言う?
己の救済を求め、祈るのは何故?

そんな疑問に誰もが行き着く前にこの国は気がつけば狂っていた。
神霊を信じないから、と人間は神の棲家たる自然を侵し、恐怖を忘れて数多くの禁忌を積み重ね、その挙句都合のいい時だけ神に祈った。
やがてその淀んでいく心の影は独りでに夜を彷徨(さまよ)った。
その影は棲家を失った神霊と混じり、または自ら形を作り、妖となった。
世にも醜き百鬼夜行が、地獄絵図が繰り広げられていく夜。
その光景をあの人は幾多も見つめてきた。
そして、何も出来ない自分に心を痛め、弱っている所を妖怪は付け狙った。
護った。
必死に誰にも指一本も触れさせないと護ったのに、限界があった。

嗚呼、誰か誰か…
このままでは…


僕の愛しいあの人が、死んでしまう…




『八百万物語・外伝〜愛しさが狂気に変わる刻〜』






.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ