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ログ(ななまつ家)
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※全国の男が悩む日ホワイトデー
※困っている旦那を楽しむの段
※若干前世ネタ









『愛する君への贈り物』






「うーん」
小平太が店に入り、様々な品物を見ては唸り続けて早一時間。
あっちにいってはきょろきょろ、こっちにいってはきょろきょろ。
決まりそうで決まらず、小平太は何度目かの唸り声を上げた。
「あぁ、もうどうすればいいんだ!?」
小平太が店でうろついている理由。
それはホワイトデーに滝にプレゼントするバレンタインデーのお返し探しであった。
「クリスマスの時は欲しがっていたぬいぐるみを買ったしなぁ」
少し前の出来事を振り返ると、その時は以前から滝が欲しがっていたものがわかっていたから出来たもの。
しかし、今回はやや少し状況が違う。
何が欲しいのかわからない。
でも、なるべく喜んでくれるものをあげたい、と考えていたが、実際それは難しいことだった。
店にはホワイトデーということで店の中心にいろいろな物が置かれ、目移りしそうになる。
メジャーなお菓子の詰め合わせや可愛いティーセットにぬいぐるみ。
中にはフライパンといった料理器具等の生活実用品があるから驚きである。
見た瞬間に出来ればもう少しロマンチックにしたい…と思ってしまったのは無理も無い。
ほとほと困ったものだ、と小平太は再び店を回る。
見れば自分と同じように悩む人達が多く見かける。
ああ、悩むのは誰も一緒なんだな、とぼんやり考える。
すると、あるものが目に付いた。
自分がいたところからやや離れて奥にある宝石店。
どんなものがあるのかな、と思うと同時に足がその店へと向かった。
そこの宝石店にはいろいろなものがあった。
時計や指輪やネックレスといった装飾品の数々。
小平太は何かいいものはないかなぁ、と思いながら見て回るも、値段を見ると流石宝石店。
皆それなりの値段である。
参ったなぁ、という本音が悲しくも頭で呟く。
ここも駄目かな。
もう諦めて別のところへ行こうとしたその時、ぱっと一つのネックレスが目に入った。
ダイヤが散りばめられている丸いリングがワンポイントになっているシンプルなシルバーネックレス。
あれ?
何で止まったんだ、私は。
無意識に反応してしまったそのネックレス。
じぃっと小平太はそれを見ていると思わず、小平太は
「あ、輪子だ」
と、誰にもわからないであろう言葉を小さく発した。
もうそれは今の滝に言ってもわからない、自分だけが覚えている記憶の破片(かけら)。
懐かしいなぁ、滝はいつも綺麗に磨いて愛用してたなぁ。
しかも、豪語しているだけあってそれなりに使うのが上手かったし。
ふと小平太の脳裏に紫の着物を着た美少年の背中が思い浮かぶ。
彼が振り返ればまるで本当に女のように艶(あで)やかで綺麗だった。
まぁ、今でも充分綺麗なんだけど。
いや、女になって更に綺麗さが増したな。
いろんな事がふつふつと浮かび上がる中、小平太はそのネックレスを見る。
これは結構いいんじゃないかな?
やっといいものが見つかったと思った。
しかし、そのネックレスの手前にある値札に書かれてある値段にうっ、と焦りが走った。
それはやはり小さいながらもダイヤが付いているネックレスだ。
わかっていたが、わかっていたが息を飲んでしまう。
小平太はズボンの後ろポケットから自分の財布を確認する事にした。
えっと諭吉が一枚、二枚、三枚、…
ある程度の消費を覚悟したのでそれなりの金額を持って来たが、そのお金は所謂自分の小遣いである。
月に貰う金額は自分がそんなにお金は使わないというのもあって、日常ではあまり苦労はしないが、今回はキツいものだった。
よ、よし、足りる!
ギリギリ足りる!
財布の中身を見て、何とかなるのを知るとやっと小平太は胸を撫で下ろした。
今日はまだ三月の半分ぐらいだが、給料は基本二十日あたりに支給される。
それに今の時期は期末テストや春休みなどでいろいろと忙しい。
恐らく教員同士の飲み会はないはず。
なら、多少金欠でも大丈夫だ!
そんな脳内計算をして小平太は店の店員に声を掛けた。
「すいません! これ下さい!」
その後、小平太は家に帰るとリビングにはソファで眠っている滝がいた。
これは丁度いい。
小平太は足音を立てないようそっと今回買ったプレゼントを滝に膝の上に置いた。
それでもまだすやすやと滝は眠っている。
起きて見たらなんて言うかな、と思いながら滝の寝顔をしばし小平太は見つめていた。









今日もななまつ家は旦那に愛されている嫁がいます。











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ども、夜の裏なお話でもはぁはぁしますが、こんな甘甘にもはぁはぁする那楽です。
次からはラストスパートに向けてとんとんと話を進めようと思います。
因みに初期の題名は「悩む男のお返し」でしたが、気に喰わなくて改名したというお話。
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