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ログ(ななまつ家)
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※ななまつ家
※友達はいつでも友達
※ちょーじ
※外から見た七松家












『最初の報告先』









その日、小平太は滝に子どもができたという事を真っ先に知らせようと思ったのは中学の時からの仲である親友の中在家長次だった。
普通はお互いの両親ではないか、と思うが、その時の小平太にはそこまで頭が回らなかったのである。
とりあえず、すぐ連絡がつき話し易い相手と考えた時、思いついたのが親友だった。
小平太は携帯を手に取り、電話帳かた親友の名前を探し、電話を掛けた。
早く出てくれないかな、と思いながらコールを鳴らした。
本が綺麗に並べられている本棚がいくつも並ぶ書斎の部屋。
その部屋の奥には窓があり、傍らには小さなテーブルと椅子。
長次はその椅子に座り、眼鏡を掛け、本を読み、無音の空間を貫いていた。
しかし、その無音の空間に突然振動音が鳴り響く。
今まで本に視線を向けていた長次が音がする方を向くと、その先にはテーブルの上で小刻みに動く携帯電話があった。
表示されている名前は『七松小平太』。
長次は呼んでいた本にしおりを入れて閉じると携帯電話を取り、呼び出しボタンを押した。
「長次、長次っ! 聞いてくれ! 今日滝に子どもが出来たのがわかったんだ! しかも、もう三ヶ月だぞ! 三ヵ月!」
いきなり話し出す小平太の落ち着きない声に長次は
「それは良かったじゃないか。凄く嬉しそうだな、その様子じゃ」
と静かに返事を返す。
「当たり前だろ! だって私と滝の子だぞ!」
「ということは、これは今晩の祝酒の誘いか?」
「うぉおおお! 話が早い! 長次には何でもお見通しだな!」
長次は小さく微笑む。
二人が電話するとこうやって決まって飲む話になる。
最初の頃は小平太から切り出していたが、それが何度も続く度に長次もいつしか電話をする意味が読めてしまったのだ。
だが、嫌いではない。
何せこういう口実でもないと会う機会がなかなかないのだ。
だからこそ、親友からの電話を長次自身も楽しみにしていた。
「最近、図書館の資料整理が忙しくて一緒に飲めなかったからな。また話をしよう。何かいる物はないか?」
「別にいいぞ! 今日は文次郎達も呼ぶし、こっちで酒買うし。あ、妹と一緒に来ないか? 一人にするのも悪いだろ?」
「あぁ、妹なら今日友人と出掛けているから気にしなくていい。こっちから連絡しておく」
「そっか、じゃあ今日は何飲むか?」
「何でも良い、そっちにまかせる」
「えー、いいのか?」
「主役は一応、お前とお前の嫁さんじゃないか」
「わかった! じゃあ、いつものように七時ぐらいに来てくれればいいから」
「あぁ」
そう言って電話を切ると、また無音の世界が生まれた。
長次は息を吐く。
月日は早いな、としぶしぶと思ったのである。
あの小平太に子どもか、さてどんな問題児が生まれてくるか。
出来れば嫁さんに似ているといいな。
父親似だと大変だからな、特にあの細かい事は気にしない猪突猛進な性格を受け継ぐと。
小平太の事を考えながら、ぽかぽかと窓から零れる日差しを浴びる。
今日は暖かいな、と長次は長閑(のどか)な一時を味わった。
「ふー、次は誰に知らせようか」
小平太はそう言ってまた携帯電話の電話帳を見た。
次は誰に伝えようと考えながら。










今日の七松家、おめでた電話発信中。












++++++++++
ちょうじが出ました。
やっと出ました。
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