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ログ(ななまつ家)
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※ななまつ家
※嫁、泣かないでぇえ!
※旦那が男を見せます
※今赤ちゃんを運んでいるコウノトリは迷子になっているんだよ!










『大丈夫、大丈夫だから』









「申し訳ありませんが、原因不明の不妊症かもしれません」
女医師はそう言った。
「健康上、何処にも異常が見やたらないのでどうも言えませんがまた何かありましたらまたいらしください」
その話を正面で聞いていた滝はただ俯いて
「そうですか…」
と答えるしか出来なかった。
近くの産婦人科の病院を出ると手には薬の入った紙袋。
病院から出されたホルモン安定剤である。
また何かあれば来てくれ、と言っていたが、正直もう行きたくなかった。
虚しくなるぐらいなら行きたくない。
そう思ったからだ。
とぼとぼ、とした足取りで家路を行く。
なんて言えばいいのだろうか。
滝の中でそれが大きく覆っていた。
いやだ、いやだ…、言いくたない。
だけど、言わなくちゃ。
矛盾した気持ちが交互に混ざり、段々追い詰められているような、圧迫した感じに襲われていく。
どう言えばいいのだろう。
どうすればわかってくれるのだろう。
迷いに迷った挙句、ついに答えが見つからないまま気がつけばもう家に辿り着いていた。
ガチャ、という玄関の閉まる音が大きく聞こえた。
玄関前に滝は立ち尽くす。
「小平太さん…」
滝は初めて困った。
初めて夫婦になって困ったことに直面した。
それも自分ではどうする事も出来ない困ったことである。
「小平太さん…」
この事をいう事で夫がどんな顔をして、どんな事を思うのかが何より怖かった。
不安が降り積もっていく。
そして、小平太が帰って来てもその不安は続いた。
しかし、何とかいつもを装い、いつものように出迎え、いつものように夕食を一緒に食べ、入浴を済ませて夫婦二人だけのゆったりとした時間を過ごした。
今は二人きり。
そろそろ話を切り出さなくては。
滝はついにか弱い決心をした。
「あの、小平太さん」
「何?」
「実は…」
あぁ、言わなきゃ。
言わなきゃ…、本当の事を、今日の事を。
早く、早く…
言おうとすると、唇が震え始めた。
嫌だ、駄目。
考えとは裏腹に目からぽたぽた、と熱いものが溢れ出す。
もう耐えられなかった。
滝は一気に咽び泣き出した。
「滝?」
本当に突然だったので、流石に小平太も驚いた。
「ごめんなざい…、ごめんなざい…」
滝は何度も謝罪を繰り返す。
小平太は何故だ、という疑問と何かがあったのかという予感に
「滝、どうしたの?」
と尋ねると、滝は泣きながら途切れ途切れに話し出した。
「わ、私…不妊症かも、しれないんです…」
「う、うん」
何かを言いたかったその声は声を出す手前で留まり、小平太は静かに頷いた。
「前から、気になってて…もしかしてって思って…そ、…それで、私…今日、病院行ったら、病院も…わからないって言って…だ、だから、下手したら私もう、赤ちゃんが…」
まだ言葉が続くかと思いきや、滝の言葉が止まった。
ぐいっと滝は引っ張られ、小平太にいっぱいに抱き締められていたからだ。
「滝」
小平太は言う。
「大丈夫だよ」
「ど、どういう…ことです、か?」
ぐずりながらも滝が言った。
「だから、大丈夫だって。心配する必要はない。今赤ちゃんがやって来ないのはきっと迷子になってるからだよ」
小平太は滝と顔を見合わせた。
滝は目元を晴らして、未だ泣いているのに対して、小平太は穏やかに笑っている。
まるで安心していいよ、と言いているように。
「そんなの…、だって、私…」
「確かに不安かもしれない。だけど、私はそんなんで滝を嫌いにはならないし、落ち込まないし、悲しまないから、傍にいるから。だから泣き止んでくれないか、な?」
「な、なんで…?」
「滝だから」
それを聞くと、滝は小平太の胸にぎゅうっと埋まった。
また一段と泣き出しそうな顔を見られなくないのだろう。
小平太は滝の綺麗な長くさらさらとした髪を撫でながら
「今日、何か様子が変だったから気になってたんだ。ごめん、今まで気付かなくて」
と、小平太は言うと滝は小平太の胸の中でふるふると首を横に振った。
くすり、と小平太は笑う。
まるで自分が謝る必要はない、と言われているようだった。
だけど、こんなに不安な思いをしていたのに気付かなかったのだ。
自分にも責任がある。
「滝、そろそろ寝ようか」
ぽんぽん、と滝の背中を軽く叩いて言うと、本人は小さく頷いた。
この後、夫婦は静かに寝室へ行き、ゆったりとした朝を迎えたとか。








今回はななまつ家に見せられました。






+++++++++
次の更新に完結させたいなー。
いやぁ、はふはふでたまらん。
てか旦那が男前!というのが今回のテーマ。
これをどれぐらい表現できたかわかんないけど、伝わればいいです!
いつもいつも皆さん、ありがとうーーー!
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