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ログ(妖怪パロ)
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とある夜の事だ。
屋敷が妙に騒がしかった。
もう誰もが寝静まっている頃なのにそこは何やら良くない事が起こったらしい。
「お願い! お願いだから逢わせて!」
茶色い髪をした男はそう言った。
必死な声を上げ、松葉の着物の袖が翻(ひるがえ)る。
しかし、その人は自分と同じぐらいの背丈を持つ銀髪の男に抑えられ、後ろの部屋へと行かせまい、としていた。
「駄目なんです、綱さん! 今は!」
大の大人の取っ組み合いは続く。
それを二人の幼子は後ろからただ見ることしか出来なかった。
「金時くん、お願い退いて! 退いてくれっ!!」
ついに銀髪の男が投げ飛ばされる。
床に叩き付けられるが、急いで起き上がり、
「行かないで下さい! 綱さん!」
と叫ぶ。
しかし、その声は間に合わなかった。
塞がっていた部屋の戸が開く。
目の前には白い寝床で顔を白い布で隠され、眠る人がいた。
綱の目が大きく開く。
「頼光くん……?」
一歩、一歩と綱は頼光へ近づく。
そして、顔の前に座ると覆われていた白い布をそっと取った。
そこには深く目を閉じた頼光がいた。
ゆっくり胸へと手を当てる。
伝わるのは冷たさと無言だった。
「そ、んな」
目から込上げてきそうなものをぐっと堪えようと目を瞑る。
堪えよう、堪えよう、と。
「綱さん」
金時が向こうで声掛ける。
だが、その声に綱は答えようとはしなかった。
誰も語らず、ただだんまりと静まり返る。
沈黙。
暫くしてだった。
突然綱は頼光の布団を払い、頼光を抱えようとした。
布の擦る音に金時や今まで後ろで見つめていた貞光、季武が綱の行動に慌てる。
「綱さん、何を考えているんですか!」
「頼光様をどうするんですか!」
貞光と季武が言う。
綱は横にいる三人を見た。
誰もが自分の行動に動揺していた。
そう思うのは無理も無い。
頼光を抱えていた綱はいつの間にか半妖化していたのだから。
その場にいた四天王の三人は息を呑む。
何をするのかわからなかったからだ。
しかし、瞬く間だった。
綱は頼光を連れてそのまま消えた。





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