夜明け前より瑠璃色なSS
□『極めて近く、限りなく遠い世界に』シンシアside
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「お会いできて光栄です。シンシア・マルグリットさん」
ターミナルから降り立った私に、先ほど通信して来た男性が声を掛けて来た。
手に持っているのは間違いなく私の懐中時計。
「こちらこそ。先ほどは通信状況が悪く聞き取れなかったのですが、あなたは?」
「失礼しました。私は地球連邦空間跳躍技術研究所所長の朝霧と申します」
また随分と長い肩書きだ。そしてやはり彼の名前は朝霧だった。
私が愛し、私を愛してくれた掛け替えのない人と同じ名前。
「色々聞きたいこともありますが、お疲れでしょう?部屋に案内します」
「ありがとうございます」
私は彼に付いて研究室を出て行く。
500年も経てばまた随分と変わるものだ。
ここがあの満弦ヶ崎だとは思えないくらいに、窓の外から見た景色は違っていた。
タツヤと私が過ごした満弦ヶ崎はもう無い。遥か前、子どもの頃に読んだ浦島太郎の気分だ。