□越えられない壁
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「こんにちは」

「あ」

私が見に行った時には、既に撮影が始まっていた。
演技をしている彼は美しくて、昼食休憩か、途中に休憩が入るまでじっと見つめていた。
声をかけると、ニコニコと寄ってきた。

「来てくださったんですねっ!」

「えぇ。約束ですから」

「午後からも撮影ですか?」

「いえ、午後からはフリーです。」

だから、と彼は繋げた

「僕とデートしましょう♪」

「えぇ。わかり……はい?え、はぁぁあ?」

「デートですよデート。ここの良いとこ教えてください。これで昨日のは無しです。」

「……はい。わかりました…」




「今日は敬語無しですよ。」

「サスケさんこそ」

「わかってますよ。…で、名前は?」

「サクラです。」

「わかった。なら、サクラって呼ぶ。サクラも俺のこと、サスケって呼べよ」

「え…はい…でも、呼び捨ては……サスケくん、で」
よしよし、とサスケくんは頭をなでる。
サスケくんは手を繋いでくれた。
私はいろんなところを連れまわして、いろんな話をした。

「サクラ。」

「はい。」

「ありがとな、今日。メアドとか、嬉しい」

「いえ…」

明日も撮影だから、とサスケくんと別
れる前。

「サクラ、電話する」

「はい。今日はありがとう。楽しかった…」


ばいばい、と幻の刻と一緒にさよならした。
サスケくんは、いつもの僕敬語キャラではなくて…
俺様で今時の男の子だった。
全てが全て、彼の演技ではないか、と考えてしまったが。
約束通り、サスケくんが電話してきた時にはそんな迷いなど、消え去っていた。





「サスケくん、起きて?」

現在。
彼は私と一緒な時を過ごしている。
俺様なサスケくんはこの二年前に、歌手を止めて、俳優となった。
あんな唐突な奇跡から早くも二年半。
世の中も捨てたものではないと確信する。

「サクラぁ…」

寝ぼけたサスケくんは甘えたで、なかなか起きてくれない。

「はいはい、起きてー。ご飯冷めちゃう」

「サクラ…」

仕方ないなあ、とボヤきつつも、目覚めのキスは日課となっていた。




fin.

おまけ…?


一年前、予想もしないニュースか日本を騒がした。

アイドル、うちはサスケ、婚約会見

婚約発表をするサスケを会場の後ろからそっと見守る桜色。

彼女の左薬指には、会見をするサスケと同じ指輪をしているのを気付いた人間は。

果たしてこの会場に何
人いたのか。






越えられない壁は
たった一言の『  』によって崩れ去った




110404 美瑠紅
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