弐
□りあるまぐねっと
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「おにいさんこんにちは」
水月の前に現れたのは季節の早い春の花だった。
りあるまぐねっと
「君は誰?どうしてここにこれたの?なぜ僕の名前を知ってるの?」
「一度に沢山の質問はやめてよ」
水月がいるのは今は使われていない「大蛇丸」の旧アジト。
鷹として活動をしていた日数も少しだけ。
水月自体も負傷続きでずっと室内に篭りっきりだったはずなのに。
見慣れないくせにどこか違うものを思い出させ苛立たせる彼女の赤い服。
「私は…桜花。此処のことは私が独自に調べた結果においてたどり着いた。貴方の名前はその調べた結果から。」
にっこりとベタつく笑顔に水月は背筋に嫌な汗が流れる。
「お姉さんさぁ。調べたってなにをさ。」
「…木ノ葉隠れの抜け忍。うちはサスケの動向及び発言等について」
桜花のテーマに水月は息を呑む。
そしてにやりと口角を上げた。
「で、お姉さんは何が狙い?」
「あなた。あの赤髪の女、嫌いでしょう?」
桜花も女に見えないほど凶暴めいた笑みを浮かべている。
「今、彼女、木ノ葉に居るの。殺りにいかない?私も彼女のことが嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで憎くて憎くて憎くて困ってたところなの」
「僕は、ただ。アイツがサスケにべったりだからさ、あのくっつきそうなあいつらの間をぶった切るのがたまんなくてさぁ!…君に手を貸そうかなって思っちゃうんだよね」
二人は目を合わせて不気味なほど美しい笑顔だった。
後日
木ノ葉隠れで戦争の慌しさにまぎれた殺人事件が起きた。
幸いにも要重要参考人を警護していた忍びは生きていたが、その要重要参考人が殺されてしまった。
赤い水溜りにくっきりと写されていたのは木ノ葉隠れの忍び特有の靴跡だった。
「お姉さんさ、その、桜花って本名じゃないでしょ」
ん?と少し前を歩いていた桜花は振り向いた。
「えぇ。まぁ。そんな、見ず知らずの他国の忍びに本名を名乗るバカはいないでしょう」
「教えてよ。本名」
どこか桜花に対してそっけなかった水月が珍しく興味を持ち始めたので驚いてしまった。
「サスケ君に聞いて見たら?どうせ合流するんでしょう?」
「…まぁね。どこで合流とか教えてやんないけど。」
ふふ、と桜花が楽しそうに笑った。
「じゃぁね、水月。此処でお別れ。サスケ君にね、こう聞いてみて………」
「ということがあってだな。」
「そうか、香燐が…まぁ、アイツも用済みだがな」
「…大事な戦闘要員欠けてしまったな」
水月の長いある日の話を聞いていた。
サスケは香燐のことを少なからず「もっと使えたのに」と残念がった様子をほんの少し見せた。
対して重吾は目に見えるほど肩を落としていた。
「でそこで一緒に計画を練った桜花がな、サスケにこう聞いたら本名が解るって。」
水月の言葉にサスケは少し反応した。
木ノ葉の警護の上忍を倒せるほどの実力をもち、「桜花」が誤って怪我を負った際には医療忍術を使っていたというのだから。
香燐を凌ぐほどの女かもしれない。
「私は貴方にまだコイしてる」
サスケは冷たい目を空に移した。
「さくらか…」
憎らしいほど青い空に淡いピンクの花弁が舞っている。
ようやく季節が変わっていたことに気付いた。
「あぁ、サスケ。桜だね」
fin.