□桜咲く君に
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『サクねぇ!!』

ボロボロと大きな漆黒の瞳から美しい涙を流す少年がいた。

『サスケくん…サクねぇは、夢に向かって歩くだけだから、ね?』

サクねぇと呼ばれる少女は周りに咲き乱れる春桜に少しも劣らず、美しい髪をしていた。

『ゆめ?』

『そう。また、サスケくんの元に帰れるような夢よ。』

「春野さーん、時間です」

はい、と呼ばれた引越し会社の人に返しつつ、サクねぇ…基サクラはサスケの頭に手を乗せた。

『泣かないで。カッコイイ顔が台無しだよ。』

ぐしぐしと涙を払って、『またね』と告げると、サクラはサスケの元から去った。

それは、サクラが15の春だった。

あれから7年。

当時8才だったサスケも、ついには高校受験を控えた、中3生だった。

隣に住んでいた春野家が引っ越してからと言うものの、7年間、毎日同じことの繰り返し繰り返し…

サスケはとうに飽きを感じていた。

3月。

飽きた中学校から解放され、余裕で合格した第一志望校に入学する手はずをとっていた。
4月。

待ちに待った、入学式。

新しい仲間と、新しい場所で、頑張ろうと意気込みながら、学校に向かう。



世の中には、神はいるらしい。


なんと、新任の先生の中に、『サクねぇ』がいたのだ。




「サクねぇ…」

はっと振り返った。

半日しかない学校に、ぽつんと何時までも帰らない生徒がいた。

…サスケだ


「サスケくん?」

「サクねぇの夢って先生だったんだ。」

サスケはサクラの近くに寄る。

「うん。今年から先生。よろしくね」

「あぁ。」

少しだけ開いた窓の隙間から春の暖かな風が入る。

「サクラ、俺、サクラのことが好きだよ」

ピク、と肩が揺れる。

「私………







これからは神のみぞ、知る。


fin.

110301

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