□一欠片の強がり
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梅雨が明け、季節は熱い夏へと向かっていた。畳んだ洗濯物を運んでいた夕利は庭に生えている、そろそろ咲きそうな朝顔を見て目を細めた。


『…ここに来て、そろそろ一年経つな。意外に早かった』


そのまま朝顔を見ていると後ろから声を掛けられた。


「夕利、どうしたの?」


ゆっくり振り向くともう運び終わったのか、手ぶらの麻紀が立っていた。麻紀は最近入って来た女中で、年が近いので良く話している。


『何でもないよ』


「そう?ここ数日、辛そうな顔してるけど」


『気のせいじゃない?じゃあうちは運ばなきゃいけないから行くね』


そう言うと夕利は背を向けて麻紀から離れた。

麻紀から見えなくなるまで離れると足を止めて息を吐いた。


『…辛そうな顔をしてるって事は、顔に出してるって事か…。元隠密御庭番衆として失格だな。鈍ったか』


フッと苦笑いを浮かべた夕利は、無意識に自分のこめかみをいじった。
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