□伍拾参話「人誅・下」
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マントを脱ぐと縁は不敵に笑いながら武器を覆う袋の紐を解き、鞘を抜いた。柄だけ見れば清国の物のように見える。しかし、刀身は間違いなく日本刀だ。


(もしかしてあれは…)


夕利がそう思っている間に二人は剣を交え始めた。激しくぶつかり合う。一見良い勝負に見えるが、どこか微温い感じがした。


(緋村さんはまだ飛天御剣流の技を出していない。まだ本気じゃない。恐らく縁も……)


飛天の剣を見せない剣心に縁は技を仕掛けた。





倭刀術蹴撃刀勢!!





斬撃と蹴足を重ねて衝撃を一気に倍加させた為、剣心は壁に叩き付けられる。


「これが俺がこの十年で得た力…大陸で零から這い上がり、頂点に昇りつめた力…

古えに日本から伝わった太刀を以て大陸で完成された新剣術『倭刀術』」



狭い日本から解き放たれ、完成されたのが大陸製日本刀「倭刀」。
そしてそれを操る大陸式新剣術「倭刀術」!!



『……やっぱりあれはそうか』


「夕利、知ってたのか?」


『…ええ、昔『単刀法選』と言う、とある明の武将が日本刀と剣術に着目し、研究を重ねて軍に広めたとされる本を読んだので。大陸の書物を研究していれば目にはする筈です』


技を見せたのに、まだ本気になる気配がない剣心。それに少々苛立ちを覚えた縁はお喋りを交えながら剣心に斬り掛った。昔語りと言うお喋りを。

話を聞きたくない剣心は龍巻閃を繰り出したが、龍巻閃は返し技として使ってこそ最も威力を発揮する技。先走って繰り出した技は柄尻で弾かれ新たな技、回刺刀勢で腕を突かれた。薫が思わず剣心の名前を叫んだその瞬間、縁は名にしがたい視線を薫に向けた。


「そして十年、少年はついに姉を殺した人斬りを見つけました。ところがなんとその人斬りは名を変え、次を見つけて幸せに暮らしていました。少年はとても我慢なりません」


縁が黒い感情が篭った視線を薫に向けていると剣心が腕で遮った。


「これはお前と拙者の私闘…ここより先の関わりは無用…お前はここで必ず食い止める」


「結構。ではお喋りはここまで。ここからが本番だ」


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