□除夕を越えて
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夕利が湯飲みの用意をしていると張が帰って来た。


「うーさむさむ。この時期の東京は寒いわ。あっ姐さん、ワイの分もよろしいでっか?」


『ええもちろん』


とりあえず不機嫌な斎藤には触れないで置こうと張は夕利と話す。ま、それもそれで逆効果なのだが。


「あ、言い忘れておったんやけど川路はんが姐さんを探してたで」


『……それを早く言って下さい』


急いで湯飲みにお茶を注いで二人に渡すと夕利は部屋を出た。


(………しまった!不機嫌な旦那と二人っきりになってしもうた。姐さん早く帰って来て〜)


夕利が出て行ってから斎藤は超絶不機嫌になった。もの凄く空気が重い。張は斎藤に殺されない内に夕利が帰って来る事をひたすら祈った。









暫くして足音が聞こえた。これは夕利だと斎藤はなんとなく分かったが


(……急いでる…?)


足音は斎藤の部屋の前を通り過ぎて行った。隣は資料室で更にその隣は夕利の部屋である。その夕利の部屋から扉が開く音がする。


「なんや?任務かいな」


殺されたくないのでずっと黙って作業をしていた張は顔を上げて口を開いた。その後、部屋の中を歩き回る音が聞こえる。ちょっと気になった張は椅子から立ち上がり扉の方に向かう。取っ手を掴もうとすると


バンッ!!


その瞬間扉が開いた。当然張の顔面にもろ当たり、あまりの痛さに張は言葉になっていない声を出してしゃがみ込んだ。


『邪魔なので退いてくれませんか沢下条さん』


扉を開けた夕利は無表情だがどこか焦っていた。夕利は気配だけで誰が誰だか分かる。それは当然、距離もだ。知ってて開けたなと、斎藤は煙を吐いた。
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