□一欠片の強がり
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小鳥の声で目が覚めた斎藤は上体を起こした。障子の紙の隙間から光が漏れる。


「……まただ…
あの声は…夕利…?」


実はここ数日、斎藤はある夢を見ていた。それは誰かが泣いている夢だ。どんなに声を掛けても姿を見せず声だけが聞こえる。


「…そうか、そろそろあいつが新撰組(ここ)に来て一年になるからか。一人で抱え込むなと言った筈なのにあの阿呆は…」


フゥ…と息を吐いて前髪を掻き上げた。身なりを整えると斎藤は部屋を出た。









『おはようございます』


斎藤が食堂に入ると、原田に朝食を渡している夕利がちょうど前にいた。入って来た斎藤を見ると夕利はいつものように笑って挨拶をした。
…いつもだが、何だか少し疲れているように見えた。


『…えっと斎藤さん、どうかしましたか?そこにいると出入りしずらくなるんですけど』


夕利は固まっている斎藤に怪訝そうな顔で聞いた。我に返った斎藤はなんでもないと席に座った。


「斎藤、夕利の笑顔に見惚れたか?」


隣の永倉がニヤニヤしながら横目で斎藤を見る。斎藤は完全に無視して女中から食事を貰い、箸を持った。


「なになに。何の話してんだ?」


(…余計なのが来た)


ご飯一杯を軽々と食べた原田は、永倉の話が気になり身を乗り出す。


「…永倉さん、違いますから」


「じゃあなんで直ぐに答えないんだ」


「だから何の話してんだよ?」


「いやな、さっき斎藤が固まってたのは夕利の笑顔に見惚れてたからじゃないのかって話だ」


「まあ確かにうっかりしてると見惚れるよなァ。夕利から貰う飯は美味く感じる」


「じゃあお代わりはいりませんね」


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