一
□一欠片の強がり
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飛び散る赤い血
抱き締められた
腕の温かさ
頭の全てを占めた
唯一の感情
それに飲まれて動く体
手に残る人を斬る感触
命ごいをする表情
懇願に近い声
耳に残る断末魔
刀にまとわりつく血
敵を討った筈なのに
湧かなかった達成感
逆に残る虚無感
収まらなかった
狂気にも似た怒気…
『!ハアハアハァ…はぁ…はぁ…はぁ………
くそ…またあの夢か…』
あの夢のせいですっかり目が覚めてしまった夕利はグシャリと髪を掴んだ。
止まらない脂汗。
襲い掛る頭痛。
早く脈打つ鼓動。
落ち着かせようとゆっくりゆっくり呼吸をする。
『…本当に暫く寝るのをやめようかなぁ。寝不足で今も辛いが…』
ここ数日、夕利がずっと見ているあの日の夢。原因は分かっている。両親が死んだ日が近付いているからだ。その二人が死んだ日は明後日…
『…うちを………
うちを置いて行かないで…
ちちうぇ…ははうぇ……』
夕利は掛け布団を纏い、震える体ごと抱き締め、そして静かに涙を流した。