□陸拾伍話「決着」
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張と剣の勝負をした次の日、二人はいつも通りに書類を片付けていた。


「夕利、いつぐらいにここを出る」


『うーん…そうですね、そろそろかな』


「今日にするなよ」


『流石に今日にはしませんよ』


苦笑いを浮かべているとある気配が警視庁に近付くのを感じた。


(………緋村さん?)


書類を置き、椅子から立ち上がって窓から外を見ると剣心が新市に何か渡していた。


『お礼状ですかね』


「何がだ」


『いや、緋村さんが新市君に何か渡したので』


「知らん」


暫くして扉をノックする音がしたので入る様に言うと新市だった。


「藤田警部補と瀧波さんに手紙が来ました。差し出し人は緋村先生です」


『……緋村…先生…?』


「あ、維新志士様々は自分にとって皆先生だと思ってますので!」


元気に言う新市に夕利は、こっちにとっては敵なんだけどねと心の中で溢した。では自分はこれでと二人に敬礼すると新市は部屋を出て行った。夕利から自分宛ての手紙を貰うと斎藤はソファに座って読み始め、夕利はその隣で読んだ。


『…………斎藤さん、日にちはいつですか』


「今日だ。そっちは」


『一週間後』


夕利は手紙を読み終わると畳んで物入れに入れた。


『焦ってますね。体が悪くなってるからって』


「……悪くなってる?」


『元々飛天御剣流は、恵まれた体躯に筋肉の鎧を纏ってやっと使いこなせる超人の剣術……
緋村さんが使うには体が余りに小さすぎるんです。いくら天賦の才で補っても使えば使う程、体に反動をためていきます。恐らく奥義、天翔龍閃の会得が引き金になったのでしょう』


「…成程、更に体が悪くなる前に決着をつけようって訳か…」


フゥ…と煙を吐いていると任務を終わらせた張が部屋に入って来た。刀を机に置き、手入れをし始めたが斎藤が持っている手紙が目に止まった。


「あんさん、その手紙はなんや?」


「ああ、抜刀斎が寄越して来た奴だ」


「抜刀斎から?なんや、今回の件の礼状でも持ってきたんかいな?」


「読んでみるか?」


ピッと手紙を指で弾く。手紙が見事に張に届いた。


「あーん、なになに…」


刀の手入れに使う綿付き棒を使って鼻をほじくりながら読んでいた張だが、
暫くしてズブ、と音を立てて棒を鼻に突っ込んだ。


「あ…あんさん…コレ…」


「フ、面白いだろ」


「冗談こいてる場合やないで…いよいよついに――…」


『まあまあその前にこれを鼻に詰めて床を掃除して下さい』


血がかなり出ているので止めないとと、夕利は苦笑いで張に紙を渡した。渡し終わると窓から外を見た。見るとそこにはこちらを見ている剣心が。試しに横目で斎藤を見ると、斎藤も剣心を見ていた。暫く三人は見つめ合っていたが、剣心が先に逸し、踵を返して薫達がいる神谷道場へと戻って行った。
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