俺屍小説
□07懺悔
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父さん、母さん…。実は俺、本当は、さ…。
「と〜う〜しゅ、さまっ!何ぼんやりしてるんですか?」
縁側で羊羹をつまみながら茶をすすってぼーっとしてたら、イツ花の顔がどアップで目の前に現れた。
それに驚き、手から湯呑が手から滑り落ちそうになったが、なんとかそれは免れた。
「もう!こんなところでぼけ〜っとしてたら、頭にきのこが生えてきますよ?」
タライに沢山の洗濯物を乗せている。これから干すのだろう。最後の一切れの羊羹をつまんで、
ぬるくなってしまった茶をすする。静かな一時だと、そう思った。
今月は子供達だけで何処まで行けるか試してみた。今回の面子は、
長女の夕顔(ゆうがお)を隊長に
弟の蒼月(そうげつ)、
夕顔の娘の美々の三人だ。
『試した』なんてえらそうな事言ってるけど、本当は健康度が低下してるから討伐に行かなかっただけ。
そろそろ俺の寿命も尽きる頃…か。
俺は湯呑を隣に置いて、ぼんやりと空を見上げた。
今月は十一月。
今月と来月は大江山が開く月。
…しかし、今の俺達では弱すぎて朱点童子の元まで行く事は出来ない。
両親は、たった二人であの朱点童子の寝所まで辿り着いたと言うのにな…。
「父さんたちが成し得た事を、息子の俺が出来ないなんてなぁ〜」
独り言を呟いて、後ろにごろりと寝転んだ。
正直、悔しかった。出来るなら、『俺が』朱点童子を倒したい。でも、それをやるのは俺の後に生まれる子孫達だ。
「どうしたんですか?当主様。なんからしくないですよ?」
ぶつぶつと愚痴をこぼしている俺の横に座り、イツ花は俺を見ている。洗濯は…もう終わったのか。
「具合があまり良くないのでしたら、漢方薬でも買ってきましょうか?」
心配そうに見つめてくるイツ花の瞳がまぶしくて、腕で自分の目を押さえ、そのまま彼女に話し掛ける。
「イツ花…。俺さ、実は…」
「まさか当主様、私が密かにへそくりをしている事に気が付いてらしたんですか!?」
「…お前がこっそり飼っている猫などどうでもいい」
人がせっかくまじめな話をしようと思っていたのに。こんなボケをかまされたんじゃ、話しにくいじゃないか…。
「俺、実は…」