俺屍小説

□07懺悔
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「はい?」

 言わなくても良いのかもしれない。
 寧ろ言っちゃいけない。

 けど、誰かに話しておかなければならない事だとも思う。

「俺さ、…実は親父たち、嫌いなんだよね」

「当主…様?」

 初めの一言を言ってしまえば、後は止まらない。俺は起き上がり、イツ花の目を見て次々に話していた。

「親父たちが朱点童子の寝所になんか行かなけりゃ、俺たちは呪いを受ける事なんか無かった。
親父たちは死ぬ事なんてなかったんだ。そうすりゃ、俺たちだって普通に暮らせたんだ!
都の奴らみたいに、普通の人生を送れたはずなんだ…!!」

 肩で息をしていた。

 勢いに任せて口走った事だった。けど、それは心の何処かにあった、深い傷。

 絶対に口にしてはいけない、事だったかもしれない…。

「何が勇者の血を引く子供だよ!だったら息子の俺がどうして朱点童子を倒せねーんだよ!?」

 握りしめた拳からは朱い血が流れ、縁側を汚していった。

 イツ花は黙って目を閉じて聞いている。

 …本当は解っているんだ。
 自分がもうすぐこの世から消えてしまうという恐怖から。
 子孫達にも同じ苦しみを与えてしまうという罪悪感から。
 愛している子供達を遺して逝くという苦痛から。

 全てから逃れたい為に、今は亡き両親に八つ当りしていると言う事…。
 それをイツ花にぶつけたって、どうにもならないのに…。


 …嫌いなんかじゃない。

 本当は、大好きで…。

 誇りに思いたいのに…。


  この『呪い』のせいで、そんな『普通』の事が出来ないんだ…。
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