D.A-2

□本音。
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お構い無しに照りつける太陽と、相反して吹く涼しげな風。それらを感じながら静かな旧道を二人は散歩していた。誰も通らない昼過ぎ、皆が午後の穏やかな時間を過ごしている。

昨日、ガゼルに襲われ怪我をしたキリに手を引かれ、責任を感じるエルーは俯き加減でキリの半歩後ろを歩いていた。キリが怪我を負った時を思い出すと、まだ心がジクリ、と痛む。キリこそは全然気にしてない、と笑っていたものの、狙われる原因を作ってしまった自分が憎らしい。少なくともあの時自分が怪我をする筈だった、と。責めて責めて、またジクリジクリ痛む心の辺りの服を掴んで、流れる涼しげな風すらエルーには不快に感じた。


「キリさん…、」

「ん?何?」

「…ごめんなさい……」


エルーの声は耳を澄ましてようやく聞こえるような呟きで、消え入りそうでまた、ふるえていた。キリは立ち止まり、そして気付く。彼女は責任を感じているのだと…。キリが怪我をしてエルーが謝ることはこれまでに何度もあった。そしてそこまではいつもと一緒で、大丈夫だ、心配しなくていい、と笑えばエルーも半ば納得してくれた。
でも今回は違った。


「……なしてください…」

「…え?」

「こ、の手を離してくだ、さい…っ」

「な、何言ってんだよ!」


離すわけが無いだろ!と声を荒上げてもエルーはしっかり瞼を閉じて唇を噛み締めるように涙をボロボロ泣きながら首を横に振り続けていた。


「へ、いきなわけがないじゃないですか…っガゼルたちに襲われるたびに、私を庇うたびに…、怪我するなんて…っわ、たし…キリさんがこっ…んなに怪我してまで生きたくな、い…っ」

「…なっ、」

「生、きたくない…っ!!」


それが心からの叫びだった。
苦しい苦しいと痛む心が叫ぶ限界。こんなにも、こんなにも大事な人が、自分の所為で傷付くなんてエルーには耐えられなかった。


「……………」

「…っう…はなして…キリさ…」


唖然と繋がれている手のひらを見つめるキリ。その瞳は焦りと、驚愕とそして悲しみ。
それが怒りの表情と切なさに変わるのには時間は掛からなかった。




「ふ、ざけんな…!!」







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