D.A-2

□本音。
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「生きたくない、なんて言うなよ!なんでそんなこと言うんだよ!馬鹿か!?オレが平気っつったら平気なんだよ!責任感じてんなら無意味だっつーの!お節介は要らねーし、アンタが責任感じなくて良いんだよ!庇いたいから庇ってんだよ、それじゃあ悪いかってんのか!?」

「でも…っこんなことじゃわたし足手まといになる…っキリさんが負わなくていい怪我まで負ってしまうことがあるかもしれない…!!そうなったら私もう…っ」

「……っ黙れ!!」


本気の怒気を孕んだキリの声はその時が初めてで、エルーの肩がビクついて震えるのが見て取れた。
キリは地面に目を逸らしてしっかりと力を入れてエルーの手を握る。力を込められる手にエルーは再度震えた。それでも、キリはしっかり、しっかりと掴んで離さない。
やがて顔を上げたキリの目には少しの涙が浮かんでいた。


「オレ、本当は…少し痛かった。」

「……っ…」

「でも、アンタが無事なら、我慢出来たし…痛いのすらも忘れた…」


穏やかでゆっくり確かな声が一言一言をエルーの耳に届かせる。その心地よさにまた涙が一粒零れた。


「弱音なんか吐くわけもない、」

「…キリさ…」

「だから、アンタには…っそれだけは…それだけは言ってもらいたくなかった!!」


次に見えたのは彼の涙。
眉間に寄せられた皺と、悲痛に耐えるように結ばれた唇と真っ直ぐエルーに向けられた瞳。


「アンタが消えてほしくないとか、アンタと一緒に居たいとか、…死にたいなんて言ってもらいたくなくて…っなんで一番わかってほしいアンタが分かってくれないんだよ!!」


必死にぶつけられる彼の本音、初めての表情。


「そんなこと言われるために…アンタを庇ったんじゃない…っ、死にたいなんて聞きたくてこの手を掴んでるわけじゃねーんだぞ!」



アンタに笑って生きていて、ほしくて…



ハラリと流れる涙を引き金に、止まらなくなる涙腺。次に出た言葉は嗚呼。
暖かい感触に包まれて、キリに抱き締められていると理解して、エルーは強くキリの背中に手を回した。




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