D.A-2

□未だに色褪せない。
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ベッドの縁から覗き込む私たちに、必死に腕を伸ばすまだまだ小さな産まれたばかりの我が子を見て自然と笑みが零れてくる。その小さな手に指が包まれ、ひ弱な力で強く握られた。


「なんかさー、なつかしーよなぁ…。」

「え…?」

「こうやって…俺たち手繋いでたの、ね。」


私と子の繋がれた手に、一際大きくて温かい手が重ねられる。その温もりに我が子は嬉しそうに笑ってキャッキャとはしゃいでいた。


彼、キリさんと出会ってもう、数年が経つ。
彼に触れられて私の運命が変わり、彼に救われて全世界の運命が変わった。それは一つの奇跡みたいな物語で…、そして彼の家に住まわせてもらって、一年前、彼からプロポーズを受け、そしてもう既に結婚までしてしまっている。しまった、なんて言い方変だけど、出会ってすぐの頃はこんな風になるなんて考えもしなかったから、まさか、私が愛する人との子供を産めるなんて。
幸せでたまらなかった。


「すっかり母さん、て顔だな、エルー。」

「キリさんてば、キリさんもお父さん、ですよ。」

「敬語、やめろって言ったろ?」

「う…だ、だって…慣れちゃってて…」


そうして今ではタームの街外れに小さな家を立てて彼と私と子供、三人で暮らしている。

穏やかに流れる生活に幸せを感じながら今はもう世界が悩まされていたトロイなんか存在しなかったんじゃないか、とさえ思うくらいだった。


「キリさん…?」

「、きょう、いい?」

「…パパはお盛んですねぇ…。」

「話逸らさないでよ〜」

「い、や、で、す!昨日も一昨日もその前も、流石にヘトヘトですよ…」


腰を引き寄せようと絡められた腕を優しく解く。それでもまた絡められてついには引き寄せられ、その上押し倒されてしまった。


「ちょ、キリさ…っ」

「エルーの反応、初めから変わらないよな。」

「きょうはや、め…っ」


いけない。このままでは流されながら最後までやられてしまう…。覆い被さる彼の肩を押すと、あぁ、変わったなぁと実感する。
中身はお世辞にも変わったなんて言えないが…、強いて言えばちょっとお盛んになったと言ったところか。


「なぁに?考えごと?」

「いや、なんか…」

「ん?」

「キリさんがずっと私のこと好きでいてくれるのが嬉しくて、」


変わらない彼の優しさがとても嬉しい。前みたいに手を引いてくれることも変わらずあるし、屈託のない笑顔で私の不安を吹き飛ばしてくれるし。
そしてまた彼は、私の脈絡のない言葉に優しく微笑むのだ。


「オレも、嬉しいよ。」


エルー、と呼びながら額に感じる温もりに幸福を感じて
私は小さく彼の頬に温もりを落とした。彼も、幸福を感じてくれただろうか。




未だに色褪せない。
(あなたのこと、)(きみのこと。)









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