D.A-2
□雨
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――…シトシトシト…
ポツリ、と鼻に落ちてくる雫を感じて、あ…これは、と思うと次々に小さな雫が空から降ってくる。もしかして、
―あめ、だ。
「あー…降ってきたな。」
「そうですねー。」
生憎傘は持っていない。
冷え始める空気。しかし傘なんか無くても何気に防げる小さな雨だと解釈し、私とキリさんは少し足を速めただけだった。
「(傘持っときゃ相合い傘出来たな。失敗した…。)」
「(キリさんて、風邪ひかなさそうだなぁ。)」
「(次からは持ってこ。この人が持とうとしたら何て阻止しようかな。あー明日辺りまた降らないかなぁ。)」
「(明日は降らないと良いなぁ…)」
それぞれ考えることは違えど、やはり雨が強くなってきたことにはお互い気付いていて、元より早足だったものが、更にスピードを増していく。
「走るか。アンタ風邪ひいちゃうし」
「あ、はい。すみません…」
結局は小走りになって出来始めた水溜まりを踏んでは超えて、踏んでは超えて、街特有の煉瓦で出来た路を走っていく。
その手は、やはり繋がれたまま。
「なーんーで、アンタってすぐ謝るんだ?」
「えぇえっ?私そんなに謝りますかー?」
「謝るよ。まったく、謝んなくて良いのに…」
「すみません……あ、」
「…………………(いや可愛いんだけどね、)」
「そ、そんな目で見ないで下さい!!」
バシャバシャと音が鳴る。
これは本格的に本降りかもしれない。ちょっとこれ以上濡れるのは冗談抜きでヤバいかも、とキリさんは呟いてすぐちかくのお店のアーケードの下に入った。
「ふぅ…」
「あ〜…凄い降って来ちゃいましたね…。」
「…アンタ、濡れる。もっとこっちおいで」
そう言いながら肩を抱き寄せると背中にはキリさんの胸板の感触。キリさんを見上げれば、その手は私の髪の毛を少し掬った。毛先から滴る水滴を眺めてクスリと笑うキリさん。水も滴るなんちゃら、と言ったものか。その妖艶さに私の顔に一気に熱が集まる。
一方キリは
「(透けちゃってるよ、)」
とか
「(水に濡れるといきなり色っぽくなるんだな)」
とか思ってたりするわけで、顔が熱くなっているのはお互い様だった。
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