おお振り
□クリスマスパーティー
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クリスマス。
野球部の男子皆でパーティーをすることになり、一番広いという理由でパーティーは三橋の家で行われることになった。
午後五時。
各自食べ物を持ち寄り、三橋の家の前に集まる。
皆純粋に西浦〜ぜでクリスマスを楽しむつもりだ。
約一名。
阿部隆也を除いて。
今日のパーティーは、プレゼント交換が有る。
そんな訳で、阿部が狙うのは勿論三橋のプレゼントだ。
そして、三橋に自分が用意したプレゼントをあげること。
これだけの人数の中、目的を遂げるため仕込んで来た。
後は実行するだけ。
そう思い、阿部はニタリと笑った。
「阿部…笑いが怖ぇぞ」
そんな阿部に気付き、花井がドン引きしながら言う。
「三橋のことでも考えてたんだろ、三橋が哀れだ…」
「三橋かわいそー!」
それを見ていた泉が呆れたように言うと、田島が同調する。
言い方からして、田島は殆ど聞いていなかっただろう。
田島は自分が持って来た茄子の挟み揚げ(田島の好物)をタッパーから出し、つまみ食いしようとしたところを泉に止められている。
「別に三橋に危害を加えるつもりはねぇよ!」
「「…………」」
阿部の言葉に、残念ながら花井も泉も疑いのまなざしを向ける。
普段が普段なだけに信用ならない。
恐らく、どんなに良くてもセクハラ紛いのことはするだろう。
「おーい!ごめん、遅れた」
慌てて駆けて来たのは栄口だ。
「おう、栄口!おっせーぞ!オレもう食っちゃおうかと思った」
「お前殆ど食いかけてただろ。パーティー始まる前どころか、人様の家の前で食うな!」
栄口に気付いた田島が、言いながらも好物を目の前にして我慢出来なかったのか、再び茄子の挟み揚げを食べようとして泉にタッパーごと茄子の挟み揚げを奪われた。
「ちょっと、準備に手間取っちゃって…」
「なんだ、また腹壊したのか?」
「別にクリスマスパーティー位で緊張しないって!」
「それもそうか…」
からかうように言う阿部の言葉に、栄口は笑顔で答える。
だがその姿に黒いものを感じ、水谷以外はゾクッとする。
多分、阿部の言葉が気に障ったんだろう。
「これで皆そろったよね―?じゃあ中入ろうよ」
「そうだな。水谷何持って来たの?」
「生クリーム!」
「ケーキじゃなくて?」
そんなクソレと栄口の会話を聞きながら、とにかく寒いし中に入ろうと花井がインターホンを鳴らす。
「は…はい…っ…!皆…いらっ…しゃい…」
「よぉ!三橋、今日は一杯食おうな!」
「三橋、上るぞ」
「お邪魔しまーす!」
玄関を開けた三橋に挨拶しながら皆が家に入る中、阿部は三橋を見つめながら三橋に歩み寄ると三橋の手を取る。
「三橋、そんな薄着のまま外出て、指冷えてんじゃねぇか!今オレが暖めてやるからな!」
そう言いながら三橋の手を両手で握り締め、何か念を送るように瞳を閉じる阿部に三橋は困惑する。
「え…ぁ…阿部…くん…?」
「あー、もぅ!んなとこに居たら余計冷えるだろ!三橋、中入るぞ!」
「花井…くん…!」
阿部のセクハラを見兼ねた花井は、阿部の手を振り払い三橋の手を取ると家の中に引っ張る。
「三橋!」
「阿部!玄関閉めろよ!」
結局三橋を連れて二階に上って行く花井に言われ、渋々と玄関を閉めると阿部も二階に向かった。
「三橋、隣り良いか?」
「良い訳ねーだろ、オレと田島が隣り座ってんだし」
「阿部はあっちな!」
二階に上ったのが最後だったからいけないのか、三橋の隣りの席は泉と田島が陣取って居た。
田島があっちと言いながら指差した方を見ると、三橋から一番遠い場所。
「オレと三橋は夫婦なんだから隣りに居なきゃなんねぇんだよ!」
「せめてバッテリーって言ってくれ」
阿部の強引過ぎる発言に、花井は疲れたように言う。
阿部が三橋の隣りだとろくなことにならないからと思い、田島と泉の間に三橋を座らせたのだ。
余計なことをされたら困る。
「三橋はオレが居なきゃ駄目なんだ…!」
「駄目なのは阿部の頭だろ。ほら、あっちに座れよ、栄口の横!」
阿部は必死に食い下がるが泉に言われ、悔しそうにしながらも仕方なく栄口の横に座る。
阿部が座ると各自持って来た料理をテーブルに広げ、パーティーが始まった。
「三橋―!これ美味いぜ!食べて見ろよ!」
「田島…くん」