Short Story

□カルロの坂
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「こんなもんでしょ。メモは全てチェックしたわ。多分全部だわ。」

両手に腰を当てたリリアと、


「そうじゃなくても、これ以上は持てない……」


右腕に紙袋を五つ、左腕に四つ引っかけて、重ねた大きな箱を三つ積み上げたトレイズが歩いていた。


水路のない細い路地で、両側は窓のない壁になっている、小さな谷間のような場所だった。



「おっと……」

トレイズが、崩れそうになった一番上の紙箱を、顎で押して直した。
額から汗が一筋流れる。



「だから、ホテルに戻ってるじゃないの」


「了解です。――でもその前に、気付いてる?」


トレイズの言葉に、リリアが小さく頷いた。
ゆっくりと歩きながら答える。


「わたし達のあとをついてくる子供でしょ」


「そう。
どう考えても、荷物を持ってくれるためにとは思えない」



トレイズ達は、カルロのことに気付いていた。そして怪しんでいる。



「ひったくりかな?」


「…多分ね。
人通りの少ないところに来たからそろそろじゃないか?」


「そろそろって言われてもね…。
トレイズがなんとかしてくれるんでしょ」


「この荷物でか?
全部落としてから追い払ってもいいけど、はずみで一つや二つは持って行かれるのは、覚悟してほしい」


「冗談じゃないわ。
仲のいい友達に、『あなたの分のお土産買ったけど盗られちゃった。ごめんね』
なんて言えると思う?」


「そりゃ言えないな」



完全にカルロのことをひったくりと勘違いをしている。



「しかも一緒に旅行に行った人間が、役立たずだったなんて」


「“役立たず”決定なの?」


「このままだとね」


「それは困る、どうするか?拳銃でも出して、
『オマエふざけんなー!』
って足下に乱射するか?俺だったらそれで逃げるけど」


「いいアイディアね。でも、わたしは拳銃なんて持ってないわよ」



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