Short Story
□二人の出会い<第二章>
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「リリアちゃん……バスの中で酔ってしまって、気持ち悪いみたいなの。だから、早いところ休ませてあげられないかしら」
アリソンが、リリアの背中を擦りながらそう言った。
「そういうことでしたら、急ぎましょう。車を用意しておりますゆえ」
「まあ、そうですか。じゃあ行きましょ、リリアちゃん」
アリソンがリリアを支えながら歩き、老人とトレイズは二人の旅行鞄を持って、王家専用の黒塗りの車(見た目は民間のものと変わらない)まで歩いていく。
***
「ご気分はどうですか?リリアお嬢様」
老人の運転する車で揺られて十五分ほど経ったところで、不意に老人が尋ねた。
「うん、大丈夫」
まだ顔色は良くないが、景色を楽しむ余裕が出てきたのか、後部座席の窓を開けてしきりに外の景色を見ているリリア。
「…………」
そんなリリアを助手席から振り返ってチラッと見たトレイズは、運転席の老人に質問した。
「ねえ、二人はどこから来たの?」
老人はそれを間髪入れずにアリソンに尋ねる。
「どちらから来られたのですか?」
これは引っ込み思案でなかなか面と向かって聞けないトレイズが編み出した質問の仕方だ。
「んー?ロクシェの首都特別地域からよ」
「それって遠い?」
「それって遠いのですか?」
「ええ。電車で二日、バスで半日かかったのよ」
「わー……随分遠いところから来たんだね」
二日半かかると聞いて、ひゃーと目を丸くするトレイズ。
しばらくそんな変なやり取りが続いた後、
「……でも、どうして?」
トレイズのその言葉にアリソンは苦笑いをこぼす。
トレイズ君のためにとはとても言えないしね……。
「素晴らしい景色を見に……かな?」
「そっかー。イクストーヴァの夏の山は綺麗だもんね」
トレイズはにっこり笑いながら、アリソンの方を向いた。もうアリソンには慣れた様だ。
それを見て、ふふ。と微笑むアリソン。
リリアは二人の会話など気にも留めずに相変わらず外の景色を眺めていた。
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