Short Story
□兄弟喧嘩
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――世界暦三二九八年。
世界に唯一ある大陸の中央部分に位置する山脈…中央山脈に囲まれている、イクストーヴァという国のある家で、ただならぬ兄弟喧嘩が勃発していた。
「だから何度言ったら分かるの?私が姉なのよ!」
「違う!俺が兄だ!」
二人は女王の子供で、双子だ。九歳になって物心がついてきて、どちらが兄なのか姉なのか、喧嘩が始まったのだ。
家の一階にある二人以外誰もいないリビングで、言い合いはまだまだ続く。
「そんな訳無いでしょ!私の方がトレイズより背が高いんだから!!」
「う…で、でも…えと…」
トレイズと呼ばれた男子が二の句を繋げられずに俯くと、女子の方がフフン。と腰に手をあて、威張ったように踏ん反り返った。
「…メ…」
「め?」
トレイズは、その目に涙を溜めながら前を向くと、目の前にいる双子の片割れを睨みつけ、
「メリエルのバカー!」
「なっ…!」
と言って、家を飛び出していった。
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