Short Story
□二人の出会い<第一章>
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世界暦三二九三年 夏
この世界において、『中央山脈の近くにある、王女様が美人の国』
と聞いて誰もが真っ先に思い浮かぶ国、それは……――
「いくすとーば?」
「そう、イクストーヴァ。今日からママと二週間そこへ旅行に行くのよ」
時刻は早朝。
人影もまばらなプラットホームに一組の親子がいた。
その子供の方がまだ寝足りない目を擦りながらあくびをする。
親子がいる場所はロクシェの玄関口といわれている程ホームの数が多いブレン駅。
今は一日十本程出ているイクストーヴァ行きの汽車を、旅行するにはそんなに多くない荷物を横に置いて待っていた。
「どんなところなの?」
三歳になるアリソンの愛娘、リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティグトン・シュルツは、
乗る予定の汽車が入って来たときの突風に長い栗毛をたなびかせながら、同じく金色の髪を押さえている母親に問うた。
「冬にはドッサリ雪が降って、もうとても大変なところ。赤ん坊の頃のリリアちゃんと一度冬に行ったことがあるけど、それはそれは大変だったわ。まあ今は夏だけどねっ」
アリソンは汽車に乗り込むリリアを手伝いながら、楽しそうに答えた。
「ふうん。……お友達できるかしら?」
リリアは自分の荷物の入ったリュックをアリソンから受け取ってそれを背負いながら不安そうに聞いた。
アリソンはそんなリリアに笑いかける。
「大丈夫。リリアちゃんは素直な子だから、きっとお友達出来るわよ」
…それに今回はフィーからのお願いで行くんだし。
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