Short Story
□桃太郎(後編)
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長年鬼が住み着いているので、鬼ヶ島と呼ばれて恐れられている島の洞窟の中央付近を、3人と1匹と1羽は、最奥に向かって走っていた。
むろん、ティーは陸にしがみついていたが。
「皆さん、この階段を登ってください」
虹色の羽根を持ったキジが、薄暗い洞窟の中、鬼の目をかい潜って案内していた。
「それにし、ても…レイさん、よく道、分かりますね…」
少々息を切らしながら話すトレイズに、レイと呼ばれたキジは、大丈夫ですか?と声をかけながら答える。
「はい、小鬼だった時の記憶が残ってますから。…毎日洞窟の中を駆けずり回っていましたからね」
レイは遠い彼方を見ているような目をしている。
「そうだとしても、ボクはレイを尊敬するよ」
トレイズと違って全く息を切らしていないキノが、微笑みながら言った。
それに、ありがとうございます。とレイが返す。
彼らの目線遠くに、微かにたいまつの火が見えて来ていた。
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