After Story

□理由
1ページ/5ページ













「なぁ!さっきお前言ったよな…俺のクッションになるだのと」



電車は時速30kmで走行している。

トレイズは、ヴィーゼルに体当たりされ、何とか食堂車の手すりにつかまっていた。



「あぁ!もちろんさ!!」


頭から血を流しながら、トレイズの足にしがみついているヴィーゼルが、嬉しそうな顔をして答える。



「じゃあ…頼んだぜ!」


そういうと、トレイズは手すりから手を離した。



「トレイズ!」


屋根の上で見ていたリリアの驚いた声が、時速30kmで遠ざかっていった。







「私の王子様!!
ついに、私のものになってくれるのかい」


「………」


トレイズは、呆れて何も言えなかった。

しかし、何を勘違いしたのか、


「あぁやはりそうなのですね!大丈夫ですよ。体の力を抜いて…」


ヴィーゼルがトレイズを抱擁しようと、大の字になる。

と共に、それまで掴まれていたトレイズの足が自由になる。



「…よっ」


そうなることを狙っていたトレイズが、ヴィーゼルの上に体を持っていく。





「感激だ!いつ死んでもいいよ!」

トレイズの行動に感極まっているヴィーゼル。


それを聞いたトレイズは、


「では、遠慮なく…」





そのままの体勢で、二人は地面に打ち付けられた。






…電車から落ちてからのたった5秒の出来事だった。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ