After Story
□理由
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「なぁ!さっきお前言ったよな…俺のクッションになるだのと」
電車は時速30kmで走行している。
トレイズは、ヴィーゼルに体当たりされ、何とか食堂車の手すりにつかまっていた。
「あぁ!もちろんさ!!」
頭から血を流しながら、トレイズの足にしがみついているヴィーゼルが、嬉しそうな顔をして答える。
「じゃあ…頼んだぜ!」
そういうと、トレイズは手すりから手を離した。
「トレイズ!」
屋根の上で見ていたリリアの驚いた声が、時速30kmで遠ざかっていった。
「私の王子様!!
ついに、私のものになってくれるのかい」
「………」
トレイズは、呆れて何も言えなかった。
しかし、何を勘違いしたのか、
「あぁやはりそうなのですね!大丈夫ですよ。体の力を抜いて…」
ヴィーゼルがトレイズを抱擁しようと、大の字になる。
と共に、それまで掴まれていたトレイズの足が自由になる。
「…よっ」
そうなることを狙っていたトレイズが、ヴィーゼルの上に体を持っていく。
「感激だ!いつ死んでもいいよ!」
トレイズの行動に感極まっているヴィーゼル。
それを聞いたトレイズは、
「では、遠慮なく…」
そのままの体勢で、二人は地面に打ち付けられた。
…電車から落ちてからのたった5秒の出来事だった。
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