After Story
□帰路
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首都特別地域は、春に吹く季節風の影響によって、まだ少し肌寒い。
そんな中を、リリアとトレイズは早足で駐車場へと向かっていた。
くしゅん…
「…寒い」
長袖のシャツだけのリリアが体を震わせた。
「当たり前だろ…いくら首都でも夕方なんだからそれだけじゃ寒いよ」
トレイズははあ。とため息をついてブレザーを脱ぐ。そして、
「わっ」
寒そうに自分の前を歩くリリアの小さな背中に、後ろからそっとそれ着せた。
「な、何なのよ、これは」
リリアはトレイズのブレザーに文句を言った。
「寒いならそれ着ときなよ」
「えーと、変なニオイしない…?」
「…昨日着たばっかりだから大丈夫だよ。それはそれでショックだけど」
「そう。…寒くないの?」
「ああ、俺は大丈夫。誰かさんよりは寒さに慣れていると自負しております」
「う…」
リリアが言い返す言葉が無くなったのでそこで会話は止まった。やはり二人の会話は長くは続かない。
そして無言のまま駐車場に着いた。トレイズがサイドカーの防犯装置を解除するまで少し時間がかかるので、その間リリアは無意識にグラウンドを眺めていた。
「…………」
そこにはいくつもの運動部が伸び伸びと部活動を行っていた。
その様子に装置を解除し終えたトレイズが気付く。
「まさかリリア…サッカー部に入りたいの?」
「はあ?何で私が」
「えっと、グラウンドを見てたから?」
「私に聞いてどうするのよ」
「あ、そっか」
「…………」「…………」
やっぱり会話が続かない。
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