はじめの一歩
□御家族の心配
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「おー佳織、出掛けんのか?」
家を出ようとしている妹を見て、達也は声をかけた。
「うん。宮田ん家」
「みやたんち!?」
返って来たのは、意外な言葉。
「宮田ん家ってお前…デートか?!」
今までなかなか進展らしい進展が無かった二人だったので、達也は至極驚いた。
「ビデオ見るだけだよ」
「ビデオ…?ビデオって何の…」
つい卑猥なビデオを想像をしてしまった達也。
ところが、佳織はきょとんとした顔であっさり答えた。
「レナードの試合のビデオだけど?」
瞬間、達也は先程の自分を反省し、同時に溜め息を吐いた。
「お前ら…男女二人でボクシングのビデオ見て楽しいか?」
「楽しいよ?」
聞くだけ無駄だった、と、達也は悟った。
「天気良いんだからさ、もっとどっか出掛けろよ」
「そっか、じゃあ一緒に行こうかな?」
「何処にっ?」
「ロードワーク」
「……佳織。ちょっと待ってろ」
満面の笑みで「ロードワーク」と答えた妹を見て、達也は携帯電話を取り出した。
「ああ、宮田か?今日佳織がそっち行くらしいな。いいか、ロードワークだけは絶対禁止だからな!」
「ちょっ…お兄ちゃん?何言ってるの?」
「は…?『スパーならいいですか』?ふざけんな、スパーじゃねぇよデートしろっつってんだよ!だいたいお前らの中にスパーリングなんて選択肢がまだあった事にビックリだよオレぁ!いいか?お前とちゃんとデートしてくるまで佳織は家にゃ入れねぇからな!」
「何でよっ?」
「だから、付き合ってる付き合ってないは関係ねーよ。一歩と久美ちゃんだって付き合っちゃいねぇけどデートした事あるんだぜ?…は?間柴の妹だよ、久美ちゃんは。大変なんだぜ?一歩もさ。それに比べてお前はいいよ。佳織の兄貴はオレなんだもんな。お兄さんって呼んでもいいんだぜ?…っ!?オイ!」
切られたな、と佳織は思った。
「全く、何言ってるの?お兄ちゃんは。私もう行くからね」
佳織は少し不機嫌な顔で家を出て行った。