はじめの一歩

□特別感
1ページ/5ページ





「こんにちはー!」


明るい声と共に入って来たのは、佳織だった。

相変わらずこのジムにはそぐわないその姿。

だけど佳織は気にもせず、準備運動を開始した。


「宮田」

そして、オレに目をつける。

「スパーリングやろう?」

「またかよ…」

「だって宮田しか相手してくれないんだもん。皆私なんかとスパーしたくないんだって」

「当たり前だろ」

ジムの奴らの気持ちはわかるぜ。

いくらヘッドギアをしていても、女を殴るのは気が引ける。

大人よりも、佳織と同い年のオレが相手をしてやるのが適任だと、一度スパーを任されて以来、佳織の相手はずっとオレがしている。

もちろん本気で殴ったりしないぜ?



けど…時々ヤバイ時がある。



「お父さん、宮田借りてもいいでしょ?」





こいつ、速いんだ…。





「宮田、本気でやれよな」

ヘッドギアを付けながら、佳織が言う。

「やるわけないだろ」

いつからこんな男勝りな喋り方を覚えたのか。

兄貴の木村さんも嘆いてるぜ。

まさかオレの口調真似してるわけじゃねぇよな…?

「集中しなよ。ゴングなるぜ?」

そのまさか…か?

その事についてのオレの思考は、ゴングの音と共に途切れた。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ