はじめの一歩
□もう少し
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「…佳織?」
珍しく浴衣なんか着てるから、一瞬気付くのが遅れちまった。
「宮田」
久しぶりに見るその顔は、明るい表情。
いや、明るい表情になった…と言うべきか。
「どうしたんだその恰好。一人か?」
「えっと…お兄ちゃん達とお祭りに来てたんだけど…」
祭り…どうりで人が多いわけだ。
あっちの神社でやっているのか。
視線を向けると、佳織と同じような浴衣姿がちらほらと。
「で、木村さん達は?」
「はぐれちゃって。携帯かけたら、わかりやすい場所で待ってろって」
「それで人込みから抜け出して来たわけか」
佳織は苦笑して、頷いた。
「けど…大丈夫かよ」
「え…?」
「向こうの空、何か暗いぜ」
晴れている東の空に反して、西側の空は厚い雲に覆われていた。
「…ッあ」
小さく声を上げた佳織。
「今、光った…」
再び空を見上げると、一瞬だが、稲妻が走った。
「遠いけど…こっちに来なきゃいいな」
「…」
「どうしたんだよ」
言葉が返って来ないと思ったら、佳織の様子がおかしい。
「ああ。花火の心配か?」
「それもあるけど…」