はじめの一歩
□夢の中の少年
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『どうしたの?』
不意にかけられる、その声。
振り向けば、小さな子供が立っていた。
『何かあったの?』
無邪気に語りかける少年。
その時、初めて気付いた。
他人に心配されるような表情をしていたという事に。
「…あ……」
慌てて笑顔をつくり、少年と視線を合わせる。
「何でもないよ?…君の方こそ、こんな時間にどうしたの?」
もう夜もふけ、空には星も出ている。
子供が一人で出歩くような時間帯ではない。
「お家は何処?お父さんやお母さんが心配するよ?」
無邪気だった少年の顔が、突然曇った。
「…?迷子になっちゃったの?」
『…』
少年は黙って首を振った。
「お姉ちゃんが送っていってあげるから、お家、教えてくれるかな?」
しゃがんで、少年の顔を覗く。
『本当っ?』
すると、少年は笑顔を取り戻し、その小さな手をのばした。
きゅっと繋がれる手。
『こっちだよ』
促されるまま立ち上がり、引かれるまま歩いた。