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□朱い涙
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たくさんの街を壊した。

数えきれない屍の山を築いた。


私に与えられた力は、いつしか自分が仕えるはずの皇帝をも脅かす物になっていた。


自分が狂っていくのは解っていた。

頭の中でナニカが囁く。

もっと壊してしまえ。
全て消えてしまえ。

引き裂け。奪え。燃やし尽くせ。

もっと血を。もっと叫びを。


私は破壊を繰り返しながら、自らも破滅に向かって堕ちていくのを止められなかった。


もう止めろと抗(アラガ)う自分は、他者を踏みにじりたいという衝動に飲まれて闇に消えた。


私は成功者のはずだ。発狂し、肉体を歪めていったあの失敗作達とは違う。


それなのにどうして、私の世界はこんなにも壊れて、狂ってしまったのだろう。


私じゃない


ワタシジャナイ


内なる心と裏腹に、鏡に映る姿のなんと醜く歪んでいる事か。


これは私じゃない。ケフカ・パラッツォではない。そうか、私はもう死んだのか。


もう眠ろう。彼に舞台を譲ろう。

実験用の顔料で化粧をした。紅く隈取られた三日月の目。狂人の自分によく似合う。

ついにケフカ・パラッツォは闇に飲まれる。
変わりに現れたのは一人の狂魔導士。鏡に映る唇が醜む。



鏡の中の男は笑った。笑いながら、涙を流した。






暗黒の世界に、もし一つだけ祈りが届くとしたら。



どうか、憐れな狂人に救いを。
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