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□月の言葉、太陽の言葉
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「それにしてもよく生きて帰れたよなぁ」
「搭が崩れ出した時はどーなるかと思ったよね」
「ワシがあと30年若ければのう」
「ジジイ最後諦めてたもんね〜。置いてきちゃえば良かった?」
「モグはまだクレーンの跡が残ってるクポ〜」
「まぁ結局俺の船のおかげだよな」
「あ、そこの肉取って」
「聞いてんのか!」
様々な料理の並べられたテーブルのあちこちで、思い思いの会話がはずむ。
尽きる事のない話題に加えて、長かった戦いからの解放感で、次々に酒瓶が空き、夜は更けていった。
子供達が眠りにつき、料理もあらかた片付いた頃、ティナは宴会を抜け出しバルコニーへ出た。
砂漠の夜は冷える。だが今は、アルコールで火照った体にその風が心地よい。
ふぅ、と息を吐いて、少女は空を見上げた。
大きな下弦の月。上空はやや風が強いのか、時折雲に隠れる。
世界を覆っていた薄紫の雲は晴れ、月もようやくその輝きを取り戻していた。
何を想うのか、夜空を見つめるティナの背後から、コツコツと階段を昇る音がした。
ふいに現れた人影は、ティナに近づき声をかける。
「寒くないか?」
「エドガー…」