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□朱い涙
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暗い、暗い――


ココハ、ドコダ―?


重い粘液に身体中を包まれているようだ。

体内に無理矢理異物が侵入する感覚。
内側から、自己を変えられていく不快さ。

ずいぶんと長く眠っていたような気がする。
手に感覚が戻るまでに少し時を要した。
何か音が――機械音?
重く閉じられた瞼を動かす。薄く開いた目の間から眩しい光が差し込む。

周りの喧騒が聞こえた。



明るさに慣れ、瞳を開けると固く固定された細い腕に何本かのチューブが差しこまれている。先ほどからの頭痛の原因はここから来ているようだ。



「目が覚めたかね?」

声の方角に目を向けると壮年の男が見えた。

「………」


「実験は成功だよ。魔導注入に拒絶反応を起こさなかったのは君が初めてだ。素晴らしい。」

「………」

「見た所は異常ないようだが…、大丈夫かね?君の名前を思い出せるか?」



私は… 私は。











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