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□雪の記憶
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雪が舞い落ちる空。街の蒸気と機械音。
これから向かうのは、私を縛りつけ、汚した者との戦いの場だ。
さくさくと雪を踏み分けて進む。
ここは魔力に満ちる土地だと、経験が告げている。それは私にとっても有利だが、これから戦う者にも同じ条件だという事だ。
―いや、相手の魔力の方が強力な分、こちらには不利か。
さく、さく、さく…
目の前に見覚えのある巻き毛が揺れる。柔らかな肩の線、細い手足。
「生まれながらに魔導の力を持つ少女… こんな所で再開するとはな…」
前を歩く彼女に語るでもなく呟いた。
「…私を知っているの?」
問いかけるティナ。やはり全てを忘れているのか。
その瞳はあの頃と変わらないのに、もう私に笑いかける事はない。
刻が経ちすぎた。
すべてを思い出す時がきたら、貴女は私を恨むだろうか。それとも―――