作品
□人間辞職希望
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ずっとずっと、一人が好きだった。
今も、一人でいる時間が唯一の幸せで誰にもこの幸せを渡したくない。
誰かがそばにいると毎日が惨めだった。
本当は口を開くのも面倒臭い。
「僕は一人が好きなんです。」
誰とも話したくなくて、誰とも会いたくなくて…
「ウチは正一のこと…」
ごめん、そういうの嫌いなんだよ。
一人の時間が欲しいだけ。
他は何も欲しくない。
「正チャンが好きだよ。」
ああ、やめてくれ。
欲しかったのは、そんな言葉じゃないのに。
言葉は言葉でしかないのに、心に響くものなんて何一つありはしなかった。
そばにいるなら、惨めでない日を下さい。
そばにいるなら、静かな日々を下さい。
あの日から失った、僕だけの時間を返して欲しい。
この気持ちを…
誰も分からなくていい。
誰にも分かって欲しくない。
僕は独りになりたい。
ああ、人間辞めたい。