作品

□優しい愛は望まない
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正チャンは大好き。
でも、あの男は嫌いだな。

「正チャン、ちゃんと仕事してくれないと困るんだよねぇ」

ああ、画面越しの正チャンは泣きそうな顔を歪めている。

「黙ってちゃ分かんないよ。」

唇を噛み締め、俯く正チャンにキツい言葉を浴びせていく。

「前回も、報告した通り…まだ、結果が出ていません。」

震えながらも、一生懸命報告しようとする正チャンを見ていると、もっと苛めたくなってしまった。

「正チャンさぁ…報告するときは、下を向くなんて誰に教わったのかな?」

バッ、と顔を上げた正チャンは既に限界で泣く寸前だった。

しかし、僕には絶対泣き顔を見せない…。
何だか苛々してしまう。

「また、スパナくんのとこにでも行くのかな?」

ビクッと肩を震わせる正一に余計に苛立ちを覚えた。

「正チャンって、スパナくんに頼らなくちゃいけないような子なのかな。」

僕が笑顔を浮かべる程に、正チャンは追い詰められている。
そして、彼のところへ行ってしまうのだ。
彼の前では、どれほど無防備な姿を晒すのだろう。
僕が少し優しくすれば、正チャンも僕に甘えてくれるのかな。
けれど、彼が優しさで正チャンを奪うなら僕は力で正チャンを奪うだけだ。

たとえ、正チャンに嫌われても…
彼に奪われるくらいなら、僕が奪ってしまおう。
だから、今は好きなだけ逃げていたらいい。

正チャンは誰にも渡さない。

ただ震えるだけの子兎を、手に入れるのはもうすぐ…。



END
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