作品
□優しい愛は望まない
1ページ/2ページ
正チャンは大好き。
でも、あの男は嫌いだな。
「正チャン、ちゃんと仕事してくれないと困るんだよねぇ」
ああ、画面越しの正チャンは泣きそうな顔を歪めている。
「黙ってちゃ分かんないよ。」
唇を噛み締め、俯く正チャンにキツい言葉を浴びせていく。
「前回も、報告した通り…まだ、結果が出ていません。」
震えながらも、一生懸命報告しようとする正チャンを見ていると、もっと苛めたくなってしまった。
「正チャンさぁ…報告するときは、下を向くなんて誰に教わったのかな?」
バッ、と顔を上げた正チャンは既に限界で泣く寸前だった。
しかし、僕には絶対泣き顔を見せない…。
何だか苛々してしまう。
「また、スパナくんのとこにでも行くのかな?」
ビクッと肩を震わせる正一に余計に苛立ちを覚えた。
「正チャンって、スパナくんに頼らなくちゃいけないような子なのかな。」
僕が笑顔を浮かべる程に、正チャンは追い詰められている。
そして、彼のところへ行ってしまうのだ。
彼の前では、どれほど無防備な姿を晒すのだろう。
僕が少し優しくすれば、正チャンも僕に甘えてくれるのかな。
けれど、彼が優しさで正チャンを奪うなら僕は力で正チャンを奪うだけだ。
たとえ、正チャンに嫌われても…
彼に奪われるくらいなら、僕が奪ってしまおう。
だから、今は好きなだけ逃げていたらいい。
正チャンは誰にも渡さない。
ただ震えるだけの子兎を、手に入れるのはもうすぐ…。
END